【インタビュー】次世代クリエーターたちの挑戦 小林幹也さん

デザインで心がけていること

日本の木工加工メーカーとのお仕事が多いようですが、ものづくり現場の人たちの中で外部のデザイナーとして飛び込むのはいろいろな苦労があるのでは?日本の森林や林業の未来をどう考えますか?など矢継ぎ早に質問すると、

ものづくりメーカーの工場は日本全国いまやそう変りはないです。どの企業もりっぱな設備や技術を持っています。

今世紀に入ってから日本のものづくり現場は変わってきています。トップに立つ方が変わりました。新しい息吹を吹き込むプロジェクトはトップにたつ社長がゴーサインを出せば進みます。いくら部下がいろいろなことをやりたいと言ってもトップが動いて決断しないと先に進めない。そういう意味では、デザインを重視する革新的なトップの方が増え、外部デザイナーが活躍できる環境は整ってきたと思います。

 

 

それと日本のものづくりメーカーはすばらしいデザイナーをたくさん抱えています。それを支えてきた技術も本当にすばらしいです。その人たちからも学ぶものは大きい。

 

Photo by MIKIYA KOBAYASHI DESIGN

 

林業などその産業の活性化のことはよくわかりませんが、日本の林業はまだまだ活用できるところがたくさんあると思います。たとえば日本は、国土森林の大分は針葉樹ですが、針葉樹は家具を作るには木の性質上、集成材とか圧縮材に多少加工が必要です。しかし、建築資材や内装材に使うともっと需要が見込めると思います。そんな木を豊富に活用した空間を創りたいと思っていますし、すでにプロジェクトを数件手掛けています。

たとえば、本来なら建築下地材として多く使われている、小さな木片を材料にして圧縮した、OSB(配向性ストランドボード、Oriented Strand Board)と言われる建材で、空間の隙間を彩る小さな家具・生活用品のブランドメーカーと組んで、ものづくりを手掛けています。

 

ChiiChiiChiiPhoto by Yosuke Owashi


OSB は合板や集成材よりも木材の利用率が高く、家具用材として使えない小径木や曲がっている木材も材料にできるため、資源が限られる現代に即した環境に配慮した素材と言えます。またテクスチャーが無垢材とは違った木の力強さを感じる事ができるのが魅力です。

経済や産業促進などまだそこまでには考えがおよばなくて、今はただ人々の暮らしをよくしたいという思いで、空間に圧迫を与えないデザイン、空間と一体感を持つデザイン、自分がデザインをやることで少しでも使い勝手が良くなって暮らしが良くなればいいと考えます。

 

Photo by Takumi Ota

Photo by Takumi Ota

Photo by Yosuke Owashi

 

小林幹也さんのデザインの特徴として、空間になじむフォルムの美しいデザインと称する人がいます。決して広くない目黒碑文谷の『タイヨウのした』。そこに置いてある家具類は、一つ一つのサイズが小ぶりなわけではなくむしろゆったりしていますが、その空間に溶け込むデザインはいつまでもそこにいたくなる居心地の良さを醸し出しています。

素材にはまったくこだわりません。仕事の依頼はどんどん広がって日本中から頂きます。確かにそんな木工加工メーカーからお話を頂くことは多くなりましたが、『UKI HASHI ウキハシ』をデザインしたときはプラスティック、Timbreドアチャイムのときは金属を使いました。これからも良いと思える素材があればそれを使ってデザインしていきます。形もプロダクトとかインテリアとかに限定せず、建築や公園、乗り物とどんなデザインもしていきたいです。あと、海外のメーカーでいいものづくりの環境をもっている企業とプロジェクトを進めていけたらと考えています。
話を聞いていると、具体的に出たわけではありませんが、爪楊枝からロケットまでデザインする勢いでした。

 

気づきのアイデアと美しいフォルムをデザインするデザイナーは日本にはまだ少なく、日本のものづくり文化の未来を担うデザイナーとして期待されている小林さん。しかしまわりの期待ほど小林さんには気負いがなく、彼にはやりたい世界が見えていてそれに迷いもなく進んできました。これからもこのスタンスは変わらないことでしょう。

欧米のライフスタイルがあこがれだった世代と、子供ころからそこそこ豊かなライフスタイルが確立されていた世代では価値観は確実に違ってきています。「失われた20年」で経済は低迷していましたが、彼等の親世代に比べれば決して貧しいわけでもなく、他の国ほど格差もない日本で育った若者たち。名誉や出世より日々の暮らしを大事にすることが幸せと考える世代。

これからの日本は、成熟経済低成長社会で育った若者たちの幸福感が、本来の日本人の生き方を取り戻すのではないかと考えます。その新たな幸福を感じるものづくりをするのが次世代のクリエーターたちなのではないでしょうか。

 


タイヨウのした
URL. http://www.taiyounoshita.jp


株式会社 小林幹也スタジオ
URL. http://www.mikiyakobayashi.com/
 

 

 

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2014.10.12)

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