【インタビュー】新型コロナウイルス禍でのインテリアビジネスはどこに向かうのか


 

【インタビュー】
新型コロナウイルス禍での
インテリアビジネスはどこに向かうのか
インテリアブランドメーカー代表へのインタビュー

 

2019年の終わりごろに発生した(であろう)COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、あっという間に世界中に感染が拡大して、2020年6月中旬現在で約780万人が感染し、少なくとも43万人が死亡しています。アジアでの感染拡大は一旦落ち着きそうですが、これからは南半球、アフリカ大陸へとさらに拡大しそうで、いまだ世界は出口の見えないトンネルのなかを走っています。

日本では2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され、移動制限などの自粛が約2ヶ月続きました。その間、日本の8割の企業が収益減となる影響をうけました。この苦境下で、わたしたちはどのように前をみて進めばいいのでしょう。

生活を豊かにするインテリア業界の状況について、インテリアブランド「タイム アンド スタイル」を運営する株式会社プレステージジャパン代表取締役 吉田龍太郎氏に現在の状況、今後のビジネスでの未来へ向けての展望などをインタビューいたしました。

【関連記事】
・日本のインテリアを世界へ!独自のライフスタイルと美意識の高いモノづくりの世界観


-----------------------------------------------


日常が失われたコロナ禍

まずは、日本にお住まいの皆様、そして世界各地の新型コロナウイルスの感染拡大により日常が失われ、困難な生活を余儀なくされている皆様には心よりお見舞い申し上げます。また感染によりお亡くなりになられました世界の多くの方々のご冥福をお祈りすると共にご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。そして現在もなお闘病されている方々におかれましては、一日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。

日本では政府より4月7日に緊急事態宣言が発令され、指定都市の生活者の活動と移動に制限が設けられました。それを受けて当社では国内店舗(東京ミッドタウン、玉川高島屋S・C、伊勢丹新宿本店)は4月8日より休業、オランダ・アムステルダムの直営店舗はアポイント制で営業継続、本社従業員も在宅勤務に移行、生産拠点の北海道・東川町の自社工場は継続して製品を製造しておりました。

一時は欧米並みに感染が拡大するのではとまで言われましたが、日本はなんとか抑え込みには成功しました。

緊急事態宣言解除後、6月1日(月)までにすべての店舗が再開し、オフィスにて通常勤務を開始しています。 休業中は大変ご迷惑をお掛け致しましたが、これからもお客様との繋がりを大切に取り組んで参ります。

全国各地の協力工場や伝統工芸に携わる多くの職人の方々も一緒に活動を続け、日本のものづくりの火を絶やすことのないよう、心を一つにして力を尽くしていこうと動きはじめています。

現在、新型コロナウイルスの感染が世界同時的に拡大する中で、私たちは近年に人類が経験したことのない大きな生命的危機、そして経済的危機に直面しています。生活を豊かにするものづくりの業界は、この世界的な危機を皆様と共に必ず乗り越えてゆきます。

 

 

ソーシャルディスタンスを取りながらの営業再開

Q:休業していた店舗が少しずつ再開していますが、どの施設も館内のお客様は以前とくらべると大きく減少しています。第2波、第3波を懸念してなかなか思うように行動できていないのが現状です。やはり、ソーシャルディスタンスを取りながらの営業再開は難しいのではないでしょうか。

~・~・~・~・~・~・


弊社では約2か月ぶりに東京ミッドタウンの店舗再開で、うつわ作家・田中信彦氏の展示販売会を開催したところ、1週間で展示された作品はほとんど売り切れました。ソーシャルディスタンスの中、たくさんの田中氏のファンの方がご来店くださいました。本社にも日本国内、海外から引っ切り無しに案件の問い合わせがあり、再開の後の営業としてはまずまずの始動です。

これからは上手にソーシャルディスタンスを取りながら、商業施設にも客足は増えるのではないでしょうか。


1週間で作品が売り切れた作家・田中信彦さんの展示販売会の様子


私も昨日PRCと抗体検査をして、延期していた欧州への出張の準備をすすめています。検査の結果、両方とも陰性でしたので、これからも今まで以上に感染症に注意しながら行動しなければいけないということです。

訪日観光客の減少や、国内の自粛等で観光業、飲食、小売業は目にみえて停滞していますが、これからは「世界の工場」である中国国内の企業活動が、国内企業に影響を及ぼすのは確実で、また世界からの製品や材料調達の遅れで価格競争など国境をまたぐ商品を輸入する卸売業などへの影響が大きくなると思います。

弊社の場合、2月、3月の店舗と商業案件などのコントラクト部での受注で、納品が4月、5月になっても、すべてが日本での材料調達と生産で、現地サプライヤーからの仕入れが困難となるような影響はなかったのですが、店舗を閉めていたので、この期間の売上げがまったく立たないという厳しさはあります。その点は今不安を感じていない経営者はいないと思います。

早く終息して以前と変わらない生活を続けていけたらいいのですが、いつワクチンや良質な治療薬ができるのわからない今は、とにかくできるところからやる毎日です。

 

 

 

すべてが終息しポストコロナ時代の日本文化が世界に与える影響は大

Q:どんなときでも心穏やかにたおやかに行動する日本人は、以前から不思議がられていましたが、今回のコロナ騒動でまた再注目を浴びています。今後日本の文化が世界に与える影響は大きくなるのでしょうか。

~・~・~・~・~・~・
 

現在、米国では新型コロナウイルス拡大以上に差別問題で大きく揺れています。5月25日、46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんがミネアポリスの白人警官に手錠で拘束され、ひざで首を圧迫され、息ができないと訴えたのちに死亡したことに端を発し人種差別とそれに対する抗議活動が社会問題に発展。全米に広がりました。

差別をしたり、受けたりはどこでもあることで、海外に一度でも住んだことのある人は多かれ少なかれいやな思いを経験します。日本でも新型コロナウイルスの感染拡大で医療従事者だけでなく、その家族への偏見や差別などが問題となりました。差別は本当に下劣なことです。

アメリカでは各地の大規模な抗議デモの一部が暴動、略奪にまで発展し、まるで世紀末のように荒廃した映像が全世界を駆け巡っています。違った意味のパンデミックです。抗議することは必要ですが、暴動、略奪は、少し落ち着いて考えてみればとても愚かなことをやっているとわかるはずなのに、みんな心に余裕がありません。

日本の感染者、死亡者の絶対数が欧米に比べて少ないので、日本の新型コロナウイルス対策は優れていたとか、成功したということを多く耳にします。それは正解でしょうか。アジア諸国間で、人口10万人当たりの死亡者数を比較すると、日本はフィリピンに次いで2番目に多いです。ですが、日本独自の対策で拡大を抑えたのは確かです。

手洗いや、マスク着用、靴を脱ぐ行為、握手やハグをほとんどしないなどの生活習慣の違い、医療水準の高さ、PCR検査の対象をランダムには拡大しない「クラスター戦略」という緻密な方法など、色々な要素が重なった結果、感染爆発と死者数を抑えましたが、決して他の国ではまねが出来るものではありません。日本だけで通用した戦略です。

社会全体のロックダウンはせず、一斉休校や「外出自粛のお願い」などの対策だけでまったくパンデミックは起きていません。日本のコロナ対策は極めて特徴的なものです。良くも悪くもこれが日本なのです。
 

以前から日本に興味がある人は多く、そんなに興味があるんだったらとにかく一度日本に来い、日本に来て生活や文化を肌で感じてみると良さがよく分かると欧米の友人たちに言っています。ここ1.2年は厳しい状態が続きますが、コロナ終息後のインバウンド需要や日本文化の海外輸出はそう心配でないような気がします。

しかし、これからは行き過ぎたグローバル経済や環境問題の見直しは必ずありますので、数より質が問われます。訪日外国人数だけをみるインバウンド需要でなく、日本で過ごす豊かな時間の提供、良質で付加価値の高い日本製品の輸出が支流となると思います。

 

 

今後の人々の消費動向の変化 ウィズコロナからアフターコロナへの変化

Q:新型コロナの感染者数が大都市に集中するなか、大都市郊外や地方圏でのテレワークで働く生活様式も関心が高まっています。今後は人口の東京一極集中の流れが変わる可能性があるのではと言われていますが、はたして大きく変化するのでしょうか。

~・~・~・~・~・~・
 

大型店舗の休業自粛中、路面店での営業を続けている同業社があり、営業できない歯がゆさがありました。社内でもコントラクトだけでも営業を続けたいという要望もありました。ですが、まずは従業員やお客様の健康が一番大事と考え、その期間は本社も一斉に在宅勤務にしました。休業や在宅勤務中は、オンラインセミナーや研修をやりました。ZOOMで北海道・東川町の自社工場とをつなぎ、社員はおのおの自宅でものづくりの現場から研修を受けます。長年勤務しているベテラン社員からも、製造過程で知らないこともあり新鮮だったと評判は良かったです。
 

また、本来ならこの時期一番忙しいはずの協力工場や伝統工芸に携わる職人さんがプロトタイプ(試作品)作りに快く手を貸してくれました。日本は東京が止まれば、それに付随して地方も止まります。自粛中でも地方の製造業者は仕事をすることは可能でしたが、製造する製品の発注がなく休業状態のところも多かったようです。新製品の構想にゆっくり時間をかけることができ、コロナ禍は悪いことばかりではありませんでした。

デジタル化もすぐには大きく変わりませんが、オンライン、オフラインの良いところを吟味しながら、できるところは少しずつ取り入れていければいいなと思っています。

同業種でインターネットなどのオンラインショッピング化に今まで以上に取り組みを強化する企業もありますが、弊社の製品はリアル店舗での営業が必要不可欠で、この空気感はオンラインでは決して伝わりません。世界のニュースではリアル店舗の閉店などが伝えられますが、現在の欧州エリアのアムステルダム店だけではアンテナ不足で、むしろ出店を増やす計画もあります。
 


オランダ・アムステルダム店

【関連記事】・ 欧州出店から世界へ向かうインテリアブランド~

 

~・~・~・~・~・~・

働く生活様式の変化で、人口の東京一極集中に歯止めがかかり、人々が心豊かに暮らすことの意義をもう一度考えるきっかけとなれば、生活を豊かにするものづくりの業界にも明るい未来となります。

日本全体が今後も持続的な成長を続けていくためにも、地方、東京がうまく連携して、それぞれが発展していくことが必要です。それぞれの良さを生かしながら共存共栄を進めていくということはすばらしいことです。

各国が編成した景気浮揚は5月末現在10兆ドル(約1100兆円)を超えました。現在は国家財政で維持している経済で、事態が落ちついた後の負債処理はたいへんですが、ポストコロナ時代の明るい未来への展望があれば、きっと世界はこの苦境も乗り越えられるはずです。

2020年6月初旬、タイムアンドスタイル東京ミッドタウン(六本木)店にてインタビュー

 

 

タイム アンド スタイルの他の記事をもっとみる>>>>>>


 


http://www.timeandstyle.com/

 

(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2020.06.14)

この記事へのメンバーの評価

  
  • まだコメントがありません。

バックナンバー

Knowledge and Skill

Group Site

ページトップへ