【フォト・レポート】CLT小屋プロジェクト『木庵』からみる建築の未来


画像提供:株式会社植田板金店

 

 

【フォト・レポート】
最大の会場で最小のプロジェクト発表イベント
CLT小屋プロジェクト『木庵(もくあん)』
完成披露発表と記念トークショーからみる建築の未来


 

 

 

岡山市にある株式会社植田板金店は、2022年6月21日に国立競技場にて、隈研吾建築都市設計事務所デザイン監修によるCLT小屋プロジェクト『木庵(もくあん)』の完成披露発表と記念トークショーを開催しました。
 

隈研吾氏が設計に関わった施設としては国立競技場は国内最大で木庵は最小ということで、最大の会場で最小のプロジェクト発表イベントでした。
 

植田板金店とコラボレーションで4年前に木造枠組壁構法と板金の外装で1作目〈小屋のワ〉を発表していますが、今回はCLTパネルを用いた7.2m2の4.5畳ほどの大きさの木造の小屋です。
 


記念トークショー「CLTと考える未来(SDGs)」

1部の完成披露発表会はたくさんのゲスト(国会議員の方も)が招かれていました。2部では、進行役に株式会社植田板金店 代表取締役 植田博幸氏、ゲストに建築家 隈研吾氏、日本CLT協会 会長 中島浩一郎氏、脳科学者 茂木健一郎氏を壇上にトークセッションが行なわれました。


「今回は、2000年ごろから木の建築に関心が集まっていて素材として一番注目されて、いろいろ可能性を秘めているCLTを使いました。広さは4畳半で中に入ると居心地がよく、心が落ち着く空間です。窓にもこだわって直に座っても椅子に腰掛けてもよい窓を二面つけました」とおっしゃるのは設計を担当した隈研吾氏。

 


CLTで製作した隈研吾氏デザインのベンチ

CLTとはCross Laminated Timber(JASでは直交集成板)の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。日本では2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました。これらにより、CLTの一般利用がスタートしています。(一般社団法人日本CLT協会webページより引用)

日本CLT協会 会長の中島氏は、日本ではまだまだCLT市場が未成熟でCLT建築の分野で出遅れていますが、法整備もすすんできていますので、これから一気に巻き返せるはずです。また、CLT市場の拡大は、林業促進で脱炭素社会の実現に大きく貢献でき、雇用拡大にもつながり地方活性化にもなると明るい未来についても言及されていました。


株式会社植田板金店は今回のプロジェクトを通して、CLT材の普及に努めるとともにアフターコロナのライフスタイルを提案しています。CLT材が普及することにより、日本の森林資源を有効活用し、山林の保全により里山の魅力を高め、川や土で繋がる海洋環境維持への貢献が可能です。また、林業をはじめとする雇用の活性化、CO2排出等の環境問題への貢献も期待されます。


今回はCLTのベンチとテーブルもデザイン


日本では高コストがデメリットなCLT
CLTは1995年頃からオーストリアを中心として発展し、現在では、イギリスやスイス、イタリアなどヨーロッパ各国でも様々な建築物に利用されています。また、カナダやアメリカ、オーストラリアでもCLTを使った高層建築が建てられるなど、CLTの利用は近年になり各国で急速な伸びを見せています。特に、木材特有の断熱性と壁式構造の特性をいかして戸建て住宅の他、中層建築物の共同住宅、高齢者福祉施設の居住部分、ホテルの客室などに用いられています。

日本初のCLT構造の3階建てアパートは、鉄筋コンクリートなら通常1カ月弱はかかるところ、ほぼ丸1日で構造体が完成したことや、CLTハンドブックによると、2枚のCLTパネルにミネラルを挟むことで壁の遮音に関する国際建築基準を満たし音響性が能許容できる音響性能を得ることができるなどメリットも多く、また、木材のため、本質的に可燃性でありますが、準耐火部材試験を経て、平成28年3月31日CLT部材等の燃えしろ設計の告示が公布・施行され、これにより、原則3階建て以下の共同住宅や学校等について、現し(防火被覆なし)で建設が可能になりました。

日本政府は公共建築物からCLTを利用し、林野庁支援により実証的建築を積み重ね、施工ノウハウの蓄積を行い、普及に向けて動いています。今後、市町村の公共施設、病院や学校などの中規模施設の建設などに、CLTが大きく展開できると期待されています。ですが、現在のCLT材の最大のデメリットは生産量が少なく、高コストであることです。日本国内では2018年時点で総工事費でRC造よりも2.5割ほど高い調査結果もでています。

需要拡大や製造・流通コスト抑制によるコスト削減は民間だけの力ではむずかしいようです。
 

隈研吾氏は平成30年度より、高知県立林業大学校の初代校長を務められています。高知県立林業大学校は森林率日本一の高知県で、林業、木材産業、木造建築の各分野で、基礎から専門的な技術までをしっかり学べる学校です。また、CLTを取り入れた建築物も多く設計されています。2000年代に入ってから日本の建築家や建築業者の間でもCLT利用が促進されています。ですが、人材育成や関係者を促すだけの民需ではなかなかことが進んでいません。せめて、RC造のコストと同じくらいにならなければ一般には普及しないのではないでしょうか。

世界中で増加したエネルギーインフラの太陽光発電はたくさんの補助金で急速に発展しました。太陽光発電は一般的に「環境にいい」というイメージがありますが、日本では太陽光発電所を建設する事業者が森林を伐採して建設することが多く、近年では土砂災害への影響も懸念されています。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の影響などで、エネルギーインフラの方向転換をした国もあります。

欧米ではコロナ後を見据えて、脱炭素やデジタル化の戦略分野への投資を加速させてきました。一方、日本はコロナ渦で需給ギャップ(GDPギャップ)が約30兆円あるといわれています。地球環境を守り、私たちが幸せに生活し続けるために本当に必要なものは何かをよく考えたグリーン成長戦略は、全体の見直しと日本政府のつよい意志が必要ではないでしょうか。

 

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(文:制作_インテリア情報サイト編集部_3  /  更新日:2022.07.04)

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