【インタビュー】 世界に挑戦し続ける日本企業「TIME & STYLE」

目黒通りを越えさせた男

 

当時目黒区八雲は人気がある芸能人の豪邸が立ち並ぶエリアとして有名でした。ですが、けっしてショップを出店するには良いとはいえない場所です。

なぜにこのような住宅地に出店を?とお聞きすると、

多くの人に反対されましたよ。それでも200坪という大空間はほしかった。もともと工場(倉庫)の空物件だったので、天井の高さは十分あった。それが魅力的でした。手持ちの資金で、大空間が借りられる場所はここしかなかった。と吉田さん。

時は90年代半ば、まだまだバブルの悪因が残る真っ只中ではありましたが、時代は少しずつ変わっていきました。南青山にはイデーがカフェを併設した3階建てのインテリアショップをオープンさせ、それをきっかけに、団塊ジュニアが広めた古着ブームが中古家具へ、そしてインテリアからカフェ・ブームへと広がっていました。

カフェ
  銀座にオープンしたスターバックスコーヒー1号店

 

「スターバックスコーヒー」が銀座にオープンしてはいましたが、このときのカフェ・ブームは従来の喫茶店とは異なります。店内には必ずテラス席があり、内装、家具、食器類、メニューにこだわり、そして音楽までがセレクトされた、新たなライフスタイルを作り出す空間となっていました。そのころから日本中に、まったりできるカフェが出現しました。それの中心的な役割をはたしたのが、青山のイデーや目黒通りのインテリアショップだったのです。


目黒通りはあっという間にインテリア雑貨&家具のショップ通りになりました。しかし、TIME & STYLE は目黒通りの端の端にあり、最寄駅の自由が丘から徒歩15分の場所にありました。当時自由が丘はインテリアショップや雑貨の街として人気を集めていましたが、ショップのほとんどは駅から10分圏内で、TIME & STYLE のように目黒通りを越えた八雲でのショップ展開はむずかしいのではと思われました。

素材感の歴史を表す手法は現在もなかなか見当たらないでしょう。だから、インテリアは躯体むき出しのコンクリート壁や仕上げなしの天井にこだわりました。そこにカフェを作って植物を置いて、ここにいるだけで居心地のいい気持ちいい空間を作りました。

 

TIME & STYLE 目黒店(現在は閉店)

このおしゃれな空間はいろいろな雑誌が取り上げてくれました。建築やインテリア雑誌だけではなく、ファッション誌、女性誌、男性誌、経済誌までが掲載しました。ユーザーのハードルが高かった目黒通りを、いとも簡単に越えさせたのがTIME & STYLEだったのです。

本、音楽、ギャラリーを併設したインテリアショップは、またたく間に当時のおしゃれなオピニオンリーダーたちの溜り場となりました。そこでは毎週末にどことなくデザイナーたちが集まってパーティが繰り広げられました。

当時家具を共同開発していたデザイナーたちの中で、ブレイク前の H.Design Associates で、今は故人となった黒川勉氏やパートナーの片山正通氏、吉岡徳仁氏の姿がありました。当時はデザイナーも不安なので誰かしら接点をもちたかったから集まって、夢や希望を語り合った。と吉田さん。

 

イタリア・Campeggi SRLの日本総代理店であり、共同開発のデザイナーたちによる家具も含めてイメージを確立していたTIME & STYLEは、とにかく3年間、家具は良く売れました。

 

 



ts_logo.jpg  TIME & STYLE のHP
 http://www.timeandstyle.com

 

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2013.06.23)

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