21_21 DESIGN SIGHT 企画展 「Material, or 」開催

 


21_21 DESIGN SIGHT 企画展 「Material, or 」 開催
2023年7月14日(金) -11月5日(日)

 

 

21_21 DESIGN SIGHTでは、2023年7月14日より企画展「Material, or 」を開催します。

展覧会ディレクターには、自主的なリサーチプロジェクトによって生まれる独自の視点から新しいデザインのかたちを発信し続ける、デザイナーの吉泉 聡を迎えます。

普段の生活で接する「もの」のほとんどは、人によってデザインがなされています。ディレクターの吉泉は、これら「もの」がつくられる過程には、この世界に存在するありとあらゆる「マテリアル」が、「素材」として意味づけされるプロセスが含まれていると述べています。つまり、特定の意味を持たなかった「マテリアル」が、人や生物との関わりの中で、「もの」へとつながる意味を付与され、「素材」となるのです。「マテリアル」と「素材」は本来同義ですが、本展では先述のように使い分けて考えていきます。

私たちがものについて考えるときに、誰かが意味付けをした素材について意識を巡らすことがあったとしても、マテリアルまで立ち戻ることはほどんどありません。合目的的に「座りやすそうな木製の椅子」と捉えることはあっても、原初的な感覚として「生命感のある木」まで立ち戻って思いを巡らせることはまれです。本来、意味とはマテリアルとの対話から立ち現れるものであったはずです。私たちは有史以前からマテリアルと共に暮らし、密接な対話を通してものをつくり、暮らしを営んできました。しかし現代社会においては、一部のつくり手がデザインを担うことで、多くの人にとってマテリアルとのつながりは「つくる/つかう」という視点から断ち切られています。

また、マテリアルとの対話とは、マテリアルを管理することとは異なります。つくり手の思ったとおりのかたちや機能をデザインすること、つまり、つくり手の思ったとおりの素材とすることが、必ずしも人とマテリアルとのよい関わり方とは言えないでしょう。むしろ、さまざまな環境問題が提起される現代だからこそ、一度素材の意味を剥ぎ取り、マテリアルとの原初的な感覚のやり取りから、その背後にある自然環境や社会環境の持続可能性まで含めて、身体的で深い対話がなされるべきだと考えられます。

本展覧会では、企画協力に芸術人類学者の石倉敏明、バイオミメティクスデザイナーの亀井 潤を迎え、これまでに人間が営んできた自然との多様な関わり方をアートや人類学の観点から紐解くと同時に、最先端のマテリアルサイエンスが我々の感覚をどのようにアップデートしてくれるのかも紹介していきます。

私たちとマテリアルのつながりを、地球をめぐる果てしなく広大な物語から読み解き、再発見を試みる本展が、マテリアルの織り成す新しい世界を感じるきっかけとなれば幸いです。



■ ディレクターズ・メッセージ

小枝を手にすれば「パキッ」っと、折ってみたくなる。

どろどろの泥を手にすれば「ベター」っと、何かに塗ってみたくなる。

大きな石ころを手にすれば、何かにぶつけてみたくなる。そして「パカッ」っと、割れる。

そんなマテリアルとの原初的な関わりは、人とマテリアルとの対話のようです。

人間はそうして地球資源との対話を積み重ね、マテリアルから人工物としての何かをつくり出してきました。マテリアルを軸にデザインという行為を捉えた時、その対話そのものがデザインだったといえるかもしれません。

それは、特定の意味を持たなかったマテリアルが、人との関わりの中で、なんらかの意味をもった創造のための「素材」となり、人工物が生まれていくという事です。その意味の生み方こそが、デザインの可能性、叡智でもある──。

そして、その意味のあり方は無限なのです。

それは一方で、私にとっての素材は誰かにとっての素材ではない場合があり、同様に、誰かにとっての素材は、

私にとっての素材ではない可能性を含んでいます。

ところで、その「私」と「誰か」とは何でしょうか?

さまざまな次元での環境破壊、地球資源の問題が指摘されています。

人間が自然を管理出来るという20世紀的な発想は、地球環境との対話をやめ、自身の都合だけで、マテリアルに

一方的に意味を「与える」態度だったと言えるかもしれません。また、一部の人だけがつくり手となる事で、多くの人がマテリアルに触れる事が減り、文字通りその対話をやめてしまったようです。そこでは、「私」以外の他の「誰か」への眼差しがこぼれ落ちていきます。それらがもたらしたのは、私を超えたさまざまな存在を感じる、知覚の低下だったように思います。

しかし、「私」と「誰か」の境界はそもそも曖昧です。むしろ、「私」は単独で存在するのではなく、さまざまな要素と常に絡まり合うように存在し、変化し続けている──。そのように考えていくべきではないでしょうか。すると、その「私」と「誰か」という定義、そしてその境界は随分と曖昧になり、変わっていきます。と同時に、マテリアルへの眼差し、つまりそこで発生する意味も、自ずと変わってくるはずです。

この展覧会では、マテリアルに「素材」という意味が生まれる方法の多様性を入り口に、人間以外の多様なものとの絡まり合いの中でのマテリアルの捉え方、そしてそのデザインの可能性について考えます。

吉泉 聡




吉泉 聡(よしいずみ さとし)  (写真:辻井祥太郎)

TAKT PROJECT代表。デザイナー。
既存の枠組みを揺さぶる実験的な自主研究プロジェクトを行い、ミラノデザインウィーク、デザインマイアミ、パリ装飾美術館、21_21 DESIGN SIGHT、香港M+など、国内外の美術館やデザインの展覧会で発表・招聘展示。その研究成果を起点に、様々なクライアントと「別の可能性をつくる」多様なプロジェクトを具現化している。

Dezeen Awards 2019(イギリス)にて「Emerging Designers of the Year」に選出、DesignMiami/ Basel 2017(スイス)にて「Swarovski Designers of the Future Award」に選出など、国内外のデザイン賞を多数受賞。3つの作品が、香港M+に収蔵されている。

iFデザイン賞審査員(2023年)、グッドデザイン賞審査委員(2018年-)。
東北芸術工科大学客員教授、武蔵野美術大学基礎デザイン学科非常勤講師。


 


■ 展示内容


展覧会企画チームが写真家ゴッティンガムとともに海岸で撮影した本展のイメージビジュアル
Photo:“ Untitled (Your Materials #63-126), ”2023 ©Gottingham
Image courtesy of Nippon Design Center and Studio Xxingham

 

本展覧会は、大きく3つの視点から私たちと「マテリアル」のつながりを読み解いていきます。

まずは「マテリアル」が、「素材」として意味づけされるという視点を探ります。人は思考によってマテリアルに意味を与える一方、マテリアルに触れているうちに意味を見出してもきました。有史以来、人が続けてきたその行為を、デザインやアート、暮らしのなかで生まれた手仕事などから紹介していきます。

 


 


続いて、マテリアルをとおした世界の絡まり合いを感じ、再発見することを目指します。私たち人間だけではなく、この世界に生きる動植物もまたマテリアルを素材としているのです。ここでは私たちが生きる世界との「つながり」を再び意識することで、マテリアルとの「つながり」を再認識することを促します。人と動植物、動植物と人工物、これらの関係性から生まれた成果物などを中心に世界と「つながる」きっかけを提示します。

 

 

最後に、私たちがマテリアルとの関係を更新する事例に迫っていきます。マテリアルと私たち人や動植物は「共異体」として、世界と絡まり合っています。そのように捉えた上で多様なマテリアルと自身の手で向き合うと、ものをつくる視点や態度は大きく変わることでしょう。ここでは新しい視点や技術をもって、マテリアルとの関係を更新した素材やその取り組みを紹介していきます。

 

 

 

デザイナーによるプロダクトやリサーチを主眼とする成果物、アーティストによるマテリアルとの対話から生まれた多
様な表現、祭具・民芸品、そして人の視点を超えた動植物や有機物によるマテリアルへのアプローチ。多種多様な
事例で、マテリアルへの意識を更新していくことを目指します。



ACTANT FOREST 「Comoris BLOCK」

 

 


BRANCH「性質の彫刻:ペットボトル/水/板」

 


吉田勝信 「もし、石炭が燃えなかったとしたら(仮題)」
 


太田 翔「According to the Grain: Coat rack, Torso 03」  (撮影:Yuta Sawamura)


小野 栞 「Muse」 (撮影:林 雅之)

 


似里 力「無題」  (撮影:るんびにい美術館)

 

 


本多沙映 「Cryptid」 (撮影:林 雅之)

 

参加作家:
ACTANT FOREST、遠藤 薫、太田 翔、小野 栞、金崎将司、TAKT PROJECT、 永沢碧衣、似里 力、BRANCH、本多沙映、吉田勝信、他

 



【開催概要】
タイトル:21_21 DESIGN SIGHT企画展「Material, or 」
会期: 2023年7月14日(金)-11月5日(日)
休館日:火曜日
開館時間:10:00 -19:00(入場は18:30まで)
入館料:一般1,400円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料
会場:21_ 21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン ⇒ map
tel. 03-3475-2121 
www.2121designsight.jp

アクセス 都営地下鉄大江戸線「六本木」駅、東京メトロ日比谷線「六本木」駅、
東京メトロ千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分

主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
特別協賛:三井不動産株式会社
展覧会ディレクター: 吉泉 聡(TAKT PROJECT)
企画協力:石倉敏明、亀井 潤
グラフィックデザイン:三澤 遥(日本デザインセンター 三澤デザイン研究室)
会場構成:中村竜治(中村竜治建築設計事務所)
テキスト: 山田泰巨
コピーライティング:磯目 健(日本デザインセンター)

21_21 DESIGN SIGHTディレクター:佐藤 卓、深澤直人
アソシエイトディレクター :川上典李子
プログラム・マネージャー:中洞貴子
プログラム・オフィサー:安田萌音

 

 

 

 

21_21 DESIGN SIGHT 21_21 DESIGN SIGHT

 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
 TEL: 03-3475-2121
 http://www.2121designsight.jp/

 

(文:21_21 DESIGN SIGHT  /  更新日:2023.05.04)

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