【21_21 DESIGN SIGHT】企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」開催

 

 

【21_21 DESIGN SIGHT】
企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」開催

2024年3月29日ー8月12日

 

 

21_21 DESIGN SIGHTでは、2024年3月29日~8月12日まで企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」を開催します。

展覧会ディレクターには、幅広い工業製品のデザインや、先端技術を具現化するプロトタイプの研究を行うデザインエンジニアの山中俊治を迎えます。

みなさんが思い浮かべる未来は、どのような姿でしょうか。あまりに壮大で漠然としており、はっきりとした輪郭をつかむことは難しいかもしれません。しかし、だからこそクリエイターたちは、未来に対するさまざまな可能性に思いをはせます。美しく、驚きにあふれた、より魅力的な世界を想像し、プロトタイプを通じて確かめるのです。今わたしたちが未来のかたちをはっきりと描くことはできなくても、生み出された「未来のかけら」を通じて、その一部にそっと触れることはできるかもしれません。

本展では、山中が大学の研究室でさまざまな人々と協働し生み出してきたプロトタイプやロボット、その原点である山中のスケッチを紹介するとともに、専門領域が異なる 7組のデザイナー・クリエイターと科学者・技術者のコラボレーションによる多彩な作品を展示します。最先端技術や研究における先駆的な眼差しとデザインが出合うことで芽生えた、未来のかけらたちを紹介します。

多様な視点が交わり、想像力が紡がれる会場で、科学とデザインが織りなす無数の可能性と、まだ見ぬ未来の世界に向かうデザインの楽しさを体感する機会となれば幸いです。

ウェブサイト: https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/

 

 

■ ディレクターズ・メッセージ
いつの時代も、最先端の科学技術とデザインはすぐそばにありました。科学者が生み出す新しい知識や技術はデザインを通じて人々の元へ届けられました。デザイナーたちによって開かれた新しいライフスタイルは、次の研究のトリガーであり続けました。しかしながら、科学者たちの本当の関心は大いなる真理を探究することにあり、デザイナーたちの目標は人々の幸福な体験や豊かな社会の実現にあるので、両者は必ずしも同じ道を歩むことはできません。科学とデザインは近くにいながら、その間には越えがたい溝もあるのです。

そのような緊張感をはらんだ科学とデザインの関わりには、初めてかのような新鮮な出会いがあり、葛藤があり、ドラマがありました。そして時代ごとに、自動車や家電、コンピュータ、スマートフォン、SNSなど、私たちの生活が一変するようなイノベーションを生み出してきました。

本展は、今まさに起こっている科学とデザインの邂逅により芽生えつつある「未来のかけら」を探るものです。本展ディレクターである山中は2001年以降、先端技術の研究者たちとともにちょっと未来を感じさせるさまざまなプロトタイプをつくってきました。2013年に東京大学に教授として着任してからは、まだ実用化されていない先端技術に形を与え、研究者と共に未来を探る「Design-LedX (価値創造デザインプロジェクト)」をスタートさせました。

企画展「未来のかけら」では山中のそうした活動をコアに、研究者とクリエイターたちの新たな「出会い」を集めます。最先端のロボティクス、積層造形、構造形態学、身体拡張、バイオエンジニアリングなどの研究者たちと、デザイナー、アーティストたちがタッグを組んで未来のかけらを錬成します。サイエンスフィクションのようなプロットにとどまらず、質感や動きを伴った体験を共有できるリアルな物語の断片です。実験室で生まれたばかりのピースを繋ぎ合わせてまだ見ぬ世界を描くのは、ご来場いただく皆さんです。

山中俊治

 

 


山中俊治 Shunji Yamanaka

1957年生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車のカーデザイナーを経て1991-94年東京大学特任准教授。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーとして腕時計から家電、家具、鉄道車両に至る幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルや3Dプリンタ製アスリート用義足など先進的なプロトタイプを開発してきた。 Suicaをはじめ日本全国のICカード改札機の共通UIをデザインしたことでも知られる。2008年より慶應義塾大学教授、2013年東京大学教授。2023年には東京大学特別教授の称号を授与された。ニューヨーク近代美術館永久所蔵品選定、グッドデザイン賞金賞、毎日デザイン賞、iF、Red Dotなど受賞多数。

 

 

■ 展示内容/プロフィール

荒牧 悠+舘 知宏

これまで荒牧はどこにでもあるような素材や部品と戯れながら、それぞれに特有の性質を見出し、作品にしてきました。今回、彼女が見つけたいくつかの要素を舘が観察し、現象の理由を解き明かしながら、ともにその仕組みを面白がることで見出したエッセンスを作品として展示します。


荒牧 悠+舘 知宏 「座屈不安定性スタディ」

荒牧 悠
慶應義塾大学政策メディア研究科修了。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科講師。構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作している。つくるオブジェは動いたり動かなかったり、扱う材料も様々。主な参加展覧会に「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」(21_21DESIGN SIGHT, 2016)、個展「荒牧 悠 “こう (する +なる )” ―phenomenal # 02」(nomena gallery Asakusa, 2022)など。

舘 知宏
東京大学大学院総合文化研究科教授。 2005年東京大学工学部建築学科卒業。 2010年同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2002年から折紙設計をはじめ、Origamizer、Freeform Origamiなどの計算折紙ツールを開発。自然と芸術における形状、機能、製作を探求し、折紙工学、構造形態学、コンピュテーショナル・ファブリケーションなどが専門。東京大学教養学部でSTEAM教育に従事。

 

 

稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子

自在化身体研究をテーマに制作された遠藤麻衣子監督による短編映画『自在』の世界観を展示します。この映画には、
研究者が設計・製作した実機が数多く登場します。それらがもたらす未知なる体験をもとに、独自の映像世界がつくら
れました。


稲見自在化身体プロジェクト「 自在肢」

 


稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子「 自在」
©︎ 3 EYES FILMS, JST ERATO INAMI JIZAI-BODY PROJECT


稲見自在化身体プロジェクト
稲見昌彦(東京大学)をはじめとする研究者約100人による研究プロジェクト。人間が物理/バーチャル空間でロボットや人工知能と「人機一体」となり、自己主体感を保ったまま自在に行動することを支援する「自在化身体技術」を研究開発。またそれらが認知、心理、神経機構にもたらす影響の解析も行う。 2017年10月~2023年3月、JST ERATOの同名プロジェクトにて挑戦的な分野融合型基礎研究として推進され、現在も展開中。

遠藤麻衣子
映画監督/アーティスト。ヘルシンキ生まれ、東京育ち。ニューヨークで創作の後、帰国。 2011年日米合作の長編映画『KUICHISAN』で監督デビュー。以後、監督作をロッテルダム映画祭など海外でも公開。 2022年オンライン映画《空》が東京都写真美術館に収蔵。 2023年日仏で取材した短編映画を完成。

 

 

 

A-POC ABLE ISSEY MIYAKE+ Nature Architects

A-POC ABLE ISSEY MIYAKEによる熱を加えると布が収縮するスチームストレッチ技術と、Nature Architectsが開発したアルゴリズムにより自動で服の折り目を設計する技術の融合によって生まれた全く新しい衣服を展示します。


A-POC ABLE ISSEY MIYAKE + Nature Architects
「TYPE-V Nature Architects project」
©️ ISSEY MIYAKE INC.

 

A-POC ABLE ISSEY MIYAKE
「A-POC ABLE ISSEY M IYAKE」は、つくり手と受け手とのコミュニケーションを広げ、未来を織りなしていくブランド。1998年に発表した A-POCは、服づくりのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方を提案してきた。時代を見つめながら進化を遂げてきたA-POCを、宮前義之率いるエンジニアリングチームがさらにダイナミックに発展させる。一枚の布の上に繰り出すアイデアは多彩に、着る人との接点は多様に。異分野や異業種との新たな出会いから、さまざまな「ABLE」を生み出している。


Nature Architects
Nature Architectsはメタマテリアルを活用した独自の設計技術によって従来製品を超える機能を実現し、既存製造設備で量産性を考慮した設計案を顧客に提供するエンジニアリングサービス会社。自動車、建設、家電、航空宇宙まで幅広い業界の根幹となる高付加価値な部材や製品の設計開発を行なっている。

 

 

 

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター (fuRo)+山中俊治

モーターやケーブルをケースで覆って隠してしまうのではなく、骨格構造から美しいロボットをつくるというコンセプトに基づきデザインされたロボットを、スケッチや図面とともに展示します。

展示作品:「morph3」「Hallucigenia 01」「Halluc IIχ」「CanguRo」「RULO」
インスタレーション:「ON THE FLY」「Wonder Robot Projection」
 


千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター (fuRo)+山中俊治 「Halluc IIχ」
(撮影: 西部裕介)
 


千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター (fuRo) +山中俊治 「CanguRo」
(撮影: 西部裕介)

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター (fuRo)
未来ロボット技術研究センターは、未来のロボットの研究開発、産学連携による新産業の創出、そしてプロダクトデザインの追求の 3つを基本理念としている。これらの実現のために、複数の専門分野を横断するチームづくりを行い、千葉工業大学の支援を受け、学際的な研究組織として設立され、ロボット産業の革新を目指し活動している。

山中俊治
1982年東京大学卒業後、日産自動車のデザイナーを経て1987年に独立。 1994年リーディング・エッジ・デザイン設立。 2008年慶應義塾大学教授、 2013年東京大学教授、 2023年より東京大学特別教授。幅広い工業製品をデザインする一方、プロトタイプの制作と検証を通じて様々な分野の科学技術研究に貢献。グッドデザイン金賞、ニューヨーク MoMA永久所蔵品選定など受賞多数。

 

 

東京大学 DLX Design Lab+東京大学池内与志穂研究室

体外で培養された脳の神経細胞と遠隔で「会話」するインスタレーションの映像とともに、神経細胞との会話を可能にするための培養器のプロトタイプやデザインプロセスを展示します。


東京大学DLX Design Lab+東京大学 池内与志穂研究室
「Talking with Neurons」
 


東京大学DLX Design Lab+東京大学 池内与志穂研究室
「Talking with Neurons」
 

東京大学 DLX Design Lab
DLX Design Labは東京大学生産技術研究所内に2016年に設立されたユニークなクリエイティブ・スタジオであり、「デザインで価値を創造する」をミッションとしている。その国際的なチームは科学者やエンジニアとの緊密な連携により革新的なアイデア、プロダクト、サービスのプロトタイプを開発している。

東京大学 池内与志穂研究室
池内与志穂研究室は、神経科学や組織工学などを融合した研究を行っている。ヒトのiPS細胞などから神経細胞や組織(オルガノイド)をつくることを通じて、神経系が出来上がる仕組みや、脳が機能するメカニズムなどを理解することを目指している。

 

 

 

nomena+郡司芽久

自分の手で組み立てて動かす、動物の関節に注目した骨格模型を展示します。模型の骨を動かしているうちに、ヒトである自分自身の関節もまた、同じように動いていることに気づきます。


nomena+郡司芽久「関節する」

 

nomena
2012年設立。日々の研究や実験、クリエイターやクライアントとのコラボレーションを通して得られる多領域の知見を動力にして、前例のないものづくりに取り組み続けている。近年では、宇宙航空研究開発機構JAXAなど研究機関との共同研究や、東京2020オリンピックにおける聖火台の機構設計などに参画。

郡司芽久
東洋大学生命科学部助教。 2017年 3月に東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了し、博士(農学)を取得。国立科学博物館、筑波大学を経て、 2021年4月より現職。専門は解剖学・形態学で、キリンをはじめとする大型哺乳類の身体構造の進化に興味をもつ。第7回日本学術振興会育志賞を受賞。


 

村松 充(Takram)+ Dr.Muramatsu

村松は研究者とデザイナーの二役となり、人間の身体に沿うプロダクトの新しいデザイン手法を、システムから開発しました。仮想的な粒子の描く軌跡を立体化した作品とともに、デザインプロセスを体験できるソフトウェアを展示します。


村松 充(Takram)+Dr. Muramatsu「場の彫刻」

 

村松 充(Takram)
デザインエンジニア 
慶應義塾大学・東京大学にて、ロボットや人間拡張デバイスのデザインなど、先端テクノロジーをベースとしたデザインプロジェクトを実施。国内外で展示発表を行う。2015年「アジアデジタルアート大賞」インタラクティブアート部門大賞、2016年「STARTS Prize」Nomination、2022年「Gold A' Design Award」受賞。2023年よりTakramに参加。

Dr. Muramatsu
リサーチャー、博士(政策・メディア)
慶応義塾大学 政策・メディア研究科修了後、東京大学生産技術研究所 Prototyping & Design Laboratory(山中俊治研究室)特任助教に着任(~2023)。生き物のような認知をもたらすロボットのデザインプロジェクトを中心に、プロトタイピング、デザインエンジニアリングを核に最先端技術の未来を描く、さまざまな研究プロジェクトに従事。

 

 

山中研究室+さまざまな分野の研究者たち

山中研究室の研究の始まりにはいつも山中のスケッチがあり、それらに導かれて多くのプロトタイプが生まれました。これまで約 15年間の間に、以下の研究者とともに開発してきたプロトタイプの数々を展示します。
今仙技術研究所・稲見自在化身体プロジェクト・臼井二美男・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・岡部 徹・河島則天・斉藤一哉・ SPLINE DESIGN HUB・鉄道弘済会義肢装具サポートセンター・新野俊樹・ Manfred Hild・吉川雅博、他

 


山中研究室+斉藤一哉「Ready to Fly」
(撮影: 西部裕介)

 


山中研究室+SPLINE DESIGN HUB「Clockoid」
(撮影: 西部裕介)
 


山中研究室+新野俊樹「Ready to Crawl」
(撮影:加藤 康)
 

 


山中研究室+新野俊樹+鉄道弘済会義肢装具サポートセンター他「Rami」
(撮影:加藤 康)
 

 


山中俊治+新野俊樹「構造触感」

 


山中研究室+宇宙航空研究開発機構(JAXA)「emblem」

 

山中研究室
東京大学生産技術研究所 山中研究室は、2013年4月より、東京大学内のさまざまな研究室や、企業と一緒に、先端技術にかたちを与える研究をしている。人々が実際に体験できるプロトタイプをつくり、技術と社会との接点を生み出す。山中研究室が取り組むデザインは、未来に贈るスケッチでもある。

 

参加作家:
・荒牧 悠+舘 知宏
・稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子
・A-POC ABLE ISSEY MIYAKE+Nature Architects
・千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)+山中俊治
・東京大学 DLX Design Lab+東京大学 池内与志穂研究室
・nomena+郡司芽久
・村松 充(Takram)+Dr. Muramatsu
・山中研究室+今仙技術研究所・稲見自在化身体プロジェクト・臼井二美男・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・岡部 徹・河島則天・斉藤一哉・SPLINE DESIGN HUB・鉄道弘済会義肢装具サポートセンター・新野俊樹・Manfred Hild・吉川雅博

 

【開催概要】
会期:2024年3月29日(金)− 8月12日(月・休)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜日
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会
特別協賛:三井不動産株式会社
展覧会ディレクター:山中俊治
企画:野村 緑(fuRo)、村松 充、阪本 真
グラフィックデザイン:岡本 健(岡本健デザイン事務所)
会場構成:萬代基介(萬代基介建築設計事務所)
テキスト/企画協力:角尾 舞
テクニカルディレクション:古田貴之(fuRo)、杉原 寛

ウェブサイト: https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/

 

 

 

(文:21_21 DESIGN SIGHT  /  更新日:2024.02.17)

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