【フォト・レポート】 アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話

 

 

【フォト・レポート】
アイノとアルヴァ 二人のアアルト
フィンランドー建築デザインの神話
世田谷美術館で開催

会期:2021年3月20日(土・祝)~2021年6月20日(日)

 




 

2021年3月20日(土・祝)~2021年6月20日(日)まで世田谷美術館で「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」を開催中。会場の様子を紹介していきます。

アイノとアルヴァ 二人のアアルトのふたりが協働したかけがえのない創造の時間25年間の作品を公開。長年遺族のもとで保管されてきた資料なども初公開されていました。互いの才能を認めあい、影響しあい、補完しあいながら作品をつくり続けたアアルト夫妻。本展は、これまで注目される機会の少なかったアイノの仕事にも着目することで、アアルト建築とデザインの本質と魅力を見つめ直し、新たな価値と創造性を見出そうとするものです。

・「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」世田谷美術館にて開催  >>>

 

Aino Aalto アイノ・アアルト(1894-1949)は、建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976)の妻としてアルヴァを支え、建築家、インテリアデザイナー、企業家、写真家としてアアルトと共に25年フィンランドの建築界をリードしました。アイノはヘルシンキ工科大学卒業後、建築事務所勤務を経て、アルヴァ・アアルトの事務所で働き始めます。その6か月後にアルヴァと結婚。以来25年間のアルヴァとの協働作業が始まります。


 

1.イタリアから持ち帰ったもの


アアルトのテキスタイルパターン「シエナ」ブリック / サンド シャドーが掛けられたアルテック製品でインテリアコーディネートされた部屋(会場入り口前の展示)

1924年、アルヴァ・アアルトと妻のアイノ・アアルトは新婚旅行でイタリアを訪れ、フィレンツェ、ヴェローナを巡り、恐らくシエナにも立ち寄ったでしょう。シエナの大聖堂をはじめとするイタリアの都市と建築に着想を得て、シエナパターンを描きました。

・アルテック アルヴァ・アアルトによる「シエナ」シリーズから3つの新たなカラー発表 >>>
 

貴重面で実直なアイノ・アアルトは、奔放で行動的なアルヴァを支え、建築図面のほとんどを彼女がとりまとめたといいます。

ヴィラフローラ(夏の家)の模型

こちらのコーナーではアイノ・アアルトのヴィラ・フローラの水彩スケッチも展示されています。また、アイノは写真家としても作品を残しています。身近な被写体を通してその中に潜む本質を見事に引き出している視座は、彼女の非凡さを垣間見せてくれます。
 

夫妻は自国フィンランドの環境特性をふまえ、自然から感受した要素をモティーフとしたデザインを通じ、彼らなりの答えを探求していきます。

 

こちらのスペースでは図面や模型、スケッチなどが丁寧に展示されています。

 

 

2.モダンライフ

国際的潮流となった合理主義的なモダニズム建築の流れのなかでも、ヒューマニズムと自然主義の共存が特徴として語られるアアルト建築は、独自の立ち位置を築きました。実用性や機能性を重視するモダニズムの理論は、ふたりのヴィジョンとも重なるものでした。


また、アイノがパートナーになったことで、アルヴァに「暮らしを大切にする」という視点が生まれ、使いやすさや心地よさを重視した空間には、優しさと柔らかさが生まれます。

1920年代後半になると、モダニズムデザインの国際的な潮流に影響されます。シンプルであること、実用的であること、そして低コストによる量産化といった理念は、ふたりの想い=思想とも重なり合うものでした。彼らは自国フィンランドの環境特性をふまえ、自然から感受した要素をモティーフとしたデザインを通じ、彼らなりのモダニズムに対する答えを探求していくことになります。
 

こちらのスペースは1/1実物展示が中心で、実用性や機能性を重視したデザインは現在にも繋がります。

 

 

3.木材曲げ加工の技術革新

曲げ加工の技術が丁寧に展示されたブースです。奥では映像でも曲げ加工技術の説明がされていました。


こちらのスペースは家具を勉強をされている方にはおすすめです。

 

 

4.機能主義の躍進

アルヴァ・アアルトによって設計されたパイミオのサナトリウムの展示コーナー
 


病室の消音設計された洗面器の解説図

 


パイミオ・チェア(会場入り口前の展示)

アイノは、このサナトリウムのために「パイミオ・チェア」と呼ばれる安楽椅子を製作。

 

 

5.アルテック物語

夫妻は1935年、資産家であるマイレア邸のクライアント、マイレ&ハッリ・グリクセン夫妻とともにArtek(アルテック)家具メーカーを創立します。


電話を置くためのサイドテーブル

アルテック設立はアイノのキャリアをさらに飛躍させる最も重要な転機でもありました。アルテックが現在まで引き継いできた品質の伝統は、彼女の力によるところも極めて大きいです。

 

 

6.モダンホーム

正面の写真はインテリアデザインの代表作といわれる「マイレア邸/1939」



 リーヒティエのアアルトハウスを再現したコーナー

 

「子どものための家具」ではアイノは家具デザイナーとしての才能を開花させていきます


 

 


7..国際舞台でのアアルト夫妻

賞を受賞した建築の設計図面が展示されています。

 

 「ボルゲブリック」シリーズ

アイノがデザインした1936年のミラノ・トリエンナーレで極めて高い評価を得たガラス器「ボルゲブリック」。これに関連してフィンランド館の会場構成もグランプリを受賞しました。
 

アアルト夫妻は建築以外にも「日常生活こそデザインされなければならない。」という信念のもとに、家具や照明器具、食器やクロスなど多くのデザインを手掛けています。特にアイノは小さな子供のグラスは滑らないように、しかも美しくデザインしました。従って、実用的で簡潔で、しかも安く大量生産が出来、一般大衆も手に入れることができることを目指しました

この考えは1930年代の精神に合致し多くの賛同者を得、モダニズムデザインの本流となり、現代にまで引き継がれています。二人が設立した”Artek(アルテック)”も日常生活を豊かにするための家具や照明器具などを作ることが目的でした。シンプルでオーガニックなデザインは、今日でもなお多くの人々の賛同を得ています。

こちらのスペースは砧公園の借景にプロダクトの展示がよく映えるすばらしい空間です。



 

エピローグーわかちあったヴィジョン

このスペースは、アルヴァ・アアルトの妻として、母としての素顔が垣間見れるコーナーです。

アイノは54歳という若さで他界しますが、ふたりが協働した25年間は、かけがえのない創造の時間となりました。互いの才能を認めあい、影響しあい、補完しあいながら本当のパートナーとして作品を作り続けました。

ふたりの役割についてはしばしば、建築をアルヴァ、インテリアや家具デザインを主にアイノが担当したといわれます。しかし実際にはそれらを明確に区別することはむずかしく、彼らは互いの才能を認めあい、影響しあい、補完しあいながら作品をつくり続けていました。女性が社会に進出することが少なかった時代において、常にパートナーに対等に向き合ったアルヴァの態度は、アイノに大きな勇気を与えたことでしょう。
 

出品展示が図面・スケッチ、家具、プロダクトデザイン、建築模型、写真等 約200点とボリュームのある内容です。時間に余裕をもってゆっくりと廻るのをおすすめします。

 


主催 : 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
共催 : 公益財団法人ギャラリー エー クワッド
特別協力:アアルト・ファミリーコレクション、アルヴァ・アアルト財団、公益財団法人竹中育英会
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、世田谷区、世田谷区教育委員会
協賛:フィンエアー、フィンエアーカーゴ、アルテック、イッタラ
企画協力:S2株式会社

 

 


【開催概要】
「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」
会期:2021年3月20日(土・祝)~2021年6月20日(日)
開館時間:10:00~18:00(日時指定予約制)
会場:世田谷美術館 1階展示室
〒157-0075東京都 世田谷区砧公園1-2 ⇒ map
tel.03-3415-6011主催 : 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 

観覧料
一般 1200円/65歳以上 1000円/大高生 800円/中小生 500円
日時指定予約のお願い《ご予約・ご購入サイトはこちら
・あらかじめ日時指定券をご予約・ご購入(オンライン・ クレジット決済)のうえご来場ください。
・当日券は指定時間枠の定員に空きがある場合のみ、窓口にて販売いたします。
・未就学児はご予約の必要はありません。
・お電話でのご予約は受け付けておりません。

期間限定チケット 一般 1000円、65歳以上 800円
※3/20(土)-4/23(金)ご来場の方限定のお得なチケットです
2/25(木)販売開始:3/20(土)-4/23(金)
4/24(土)以降ご来場の方の販売スケジュール
3/25(木)販売開始:4/24(土)-5/23(日)
4/25(日)販売開始:5/25(火)-6/20(日)

 

世田谷美術館
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 

(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2021.04.03)

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