目黒区美術館 「包む―日本の伝統パッケージ」開催




目黒区美術館Meguro Museum of Art, Tokyo
包む―日本の伝統パッケージ
TSUTSUMU :The Origin of Japanese Packaging

2021年7月13日[火]~ 9月5日[日]

 

 

 

目黒区美術館では2021年7月13日[火]~ 9月5日[日]の期間、「包む―日本の伝統パッケージ」を開催します。
 

目黒区美術館
https://www.mmat.jp/index.html

 

木、竹、土、藁、紙、布―自然の素材を生かし、職人気質に守られ、昔から「本物」の姿を保ち続けられてきた「日本の伝統パッケージ」の数々。そこに宿る、日本人の自然観と美意識。そして、微妙な手わざによる造形美。本展では、それらをアートディレクター岡秀行の視点を交えながら紹介します。展示については、岡の収集コンセプトに基づき、パッケージは主に素材別に分けて展示します。包装素材が植物の葉など保管のできないものや一部のパッケージについては写真での展示となります。
 

1972年に出版された写真集『包』(毎日新聞社刊)は、すでに絶版となっているものの、愛蔵書として今なお読み継がれています。この本の著者は岡秀行(おかひでゆき 1905ー1995)。岡は、戦前からアートディレクターとして活躍する一方で、木、竹、藁など自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、収集・研究を始め、藁の苞(つと)の素朴な美しさや、すし桶、菓子箱の職人技による伝統美に、日本人ならではの「美意識」と「心」を見いだし、「伝統パッケージ」と呼称を与え、書籍の出版や展覧会を通じて、高度経済成長期の日本において消えつつある技術や美があることの啓蒙につとめました。

 


《卵つと》 山形県  撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)

1970年代半ばには、岡のコレクションは世界巡回展へと発展し、「TSUTSUMU」(包む)という言葉とともに大きな反響を呼びます。そして、このコレクションを日本の美術館で初めて本格的に紹介したのは、1988年に当館が開催した「 5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ展」でした。これを機に当館は出品されたパッケージ群を岡より譲り受け、「〈包む〉コレクション」として収蔵しています。本展は、 2011年にその全容を紹介する展覧会を開催して以来、10年ぶりの展覧です。

「包むことについて考えるのは、人間の生活のすべてについて考えることに他ならない」。岡は前掲書の中でこのように述べています。そして、「私たちにとって、人間とは何か、生活とは何か、社会とは何かを考えることは、つまりは私たちのこの生をどう包むかという問題だとさえいえるだろう」と。

今、私たちは新型コロナウイルスの渦中にいます。新しい生活様式で暮らす中、身近なものへの関心や大切な人への想いなどが変化したように感じている方は多いのではないでしょうか。本展で展示するパッケージは、製造されてから 30年以上が経ち、自然素材ゆえの色褪せや割れといった経年変化が見られます。しかし、この度の展示で、パッケージに向けられた岡のまなざしと、「包む」ことに込められた日本人の心や手わざの美しさを見つめることは、岡が言うように、私たちの生を考える良い機会と言えるのかもしれません。

 


 

包む―日本の伝統パッケージ

● 岡 秀行の視点
岡が収集した「伝統パッケージ」の特徴は、木、竹、笹、藁などわが国の風土に育まれた自然素材や、陶器、和紙、絣(かすり)など、古来、日本人に馴染みある素材が使われている点がまず挙げられます。そして、デザインの観点から言うと大きく二つに分けられます。一つは、「生活の知恵の結晶として生み出された形」であるということ。実用性に重きをおき、余計なものが省かれた、シンプルな造形美と機能美を見い出せます。もう一つは、伝統の技と言っても良い「高度な包装技術と美的感覚を持つもの」であるということ。“包むこと”自体に重要な意味づけをしてきた日本人の美意識と、“いかに美しく包むか“という職人や作り手のプライドと手わざの美を見い出せます。収集を始めた当初は、パッケージの“かたち”の美しさそのものに魅力を感じていましたが、「包むことについて考えるのは、人間の生活のすべてについて考えることに他ならない」(岡秀行「包装の原点」『包』毎日新聞社刊、1972年)と言うように、岡のまなざしは、しだいに“かたち”の奥にひそむ日本人の「心」へと注がれていきました。

 


《釣瓶鮓》  奈良県/釣瓶鮓弥助  撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)

 


《ささらあめ》 宮城県/熊谷屋  撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)

 


《澤之鶴》  兵庫県/沢の鶴株式会社  撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)

 


《おひねり》 撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)

※パッケージの図版写真は、自著・写真集刊行のために岡秀行のディレクションにより主に1960年代~70年代に撮影された写真です(撮影者=酒井道一)。これらの写真は、本展広報や展示会場で使用いたしますが、本展で展示するパッケージ(実物)と図版写真は同一のものとは限りません。




● 目黒区美術館と岡 秀行の〈包む〉コレクション
岡による「伝統パッケージ」の展覧会は、1975年のニューヨーク、ジャパンソサエティ・ギャラリーでの展覧会(ジャパン・ソサエティ主催)を皮切りに、全米各地を巡回した後、1979年からは国際交流基金の協賛のもと、1980年代半ばにかけて世界各国で開催され、高い評価を得ていきました。この海外での成果を踏まえ、岡とその関係者の方々が日本の美術館での展覧会と収蔵を模索していた時期に、趣旨に賛同した当館が1988年に「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ」展として開催。これは、日本の公立美術館で岡のパッケージ・コレクションを紹介する最初の展覧会となりました。同展終了後、当館は出品されたパッケージ群を岡より譲り受け、「〈包む〉コレクション」と名付け、以来大切に保管してきました。2011年に当館で所蔵作品展として〈包む〉コレクションを紹介。2021年の今回は、当館での三度目の展覧会となります。

 


《岡山獅子》 岡山県/中尾正栄堂  撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)
 

《展示構成》

【「岡秀行旧蔵〈包む〉コレクション」の分類】
A : 木
B: 竹
C: その他自然素材
D: 土
E: 藁
F : 紙
G: 布
H: その他

【主な出品物】
「釣瓶鮨」 「稲庭饂飩」 「金千両」 「卵つと」 「巻鰤」 「ささらあめ」「御香煎」 「柿羊羹」 「霞三盆」 「大徳寺饅頭」 「岡山獅子」 「琉球泡盛」「十六味地黄保命酒」 「文楽人形焼」 「祝儀袋」 など約 400点を予定

※展示するコレクションのほとんどは、食品、菓子、酒類の包装・容器(パッケージ)です。
※一部のパッケージは、経年劣化のみられるものがあるため、現在は製造されていない等入手が困難なものは、 実物の展示はなく写真パネルでの紹介とする場合があります。現行商品で同じ仕様のパッケージがあるものは、新しいものを展示する場合もあります。
※展示で使用する写真、本プレスリリース及び本展広報用印刷物などで使用するパッケージの写真はすべて、自著・写真集刊行のために岡秀行のディレクションにより主に1960年代~ 70年代に撮影された写真です。本展に出品する〈包む〉コレクションのパッケージの大半は、それ以降に製造されたものであるため、使用する写真と出品物のデザインや仕様が異なる場合があります。ご了承ください。

 

■岡秀行(おか・ひでゆき) 1905-1995
1905年、福岡県生まれ。1923年に上京し、川端美術学校で洋画を学ぶ。1935年、図案と写真撮影を行う「オカ・スタジオ」を銀座に設立。アートディレクター・システムを導入したデザイン事務所の草分けとなる。戦後は、グラフ雑誌、宣伝広告、ポスターなどのデザインを広く手がけるほか、図案家のための職能団体確立に尽力。1950年の日本宣伝美術会の設立に協力、1952年には東京商業美術家協会(TCAA)を設立し、初代委員長に就任、さらに1962年に地方17団体326人の図案家を結集した全国商業美術家連盟(ACA)を設立するなど、特に独立系の図案家の職能と地位の確立を目指した。一方で、1950年代より日本の伝統パッケージの収集と研究をはじめ、1964年に全国商業美術家連盟(ACA)の第1回企画展として伝統パッケージを展示。その後、写真集『日本の伝統パッケージ』(美術出版社、1965年)や、『包』(毎日新聞社、1972年)を出版。1975年、岡70歳の時に、ニューヨークから始まり世界巡回した「TSUTSUMU」展は10年以上にわたり28カ国で開催され、日本の公立美術館では、1988年に目黒区美術館の「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ」展で初めて紹介された。

 

【開催概要】
包む―日本の伝統パッケージ
開催場所:目黒区美術館(東京都目黒区目黒 2 -4 -36) ⇒ map
開催期間:2021年 7月 13 日[火]~ 9月 5日[日]
開催時間:午前10時~午後 6時(入館は午後 5時 30分まで)
休館日:月曜休館(ただし 8月 9日[月休]は開館、8月 10日[火]は休館)
料金:一般 800(600)円、大高生・ 65歳以上 600(500)円、中学生以下無料
・障がいのある方とその付添者 1名は無料、()内は 20名以上の団体料金
・目黒区在住、在勤、在学の方は受付で証明書類をご提示頂くと団体料金になります(他の割引と併用はできません)
主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団目黒区美術館
企画協力:吉田知哉(株式会社コンセント)、佐賀一郎(多摩美術大学)

JR山手線・東急目黒線・東京メトロ南北線・都営三田線「目黒」駅(西口)から徒歩 10分
東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒」駅から徒歩 20分
東急バス「権之助坂」(目黒通り)下車徒歩 5分、「田道小学校入口」(山手通り)下車徒歩 3分

 

◎新型コロナウイルスの感染拡大の状況によっては、会期等が変更になる場合がございます。最新の情報は当館ホームページでご確認いただくか、お問い合せください。


目黒区美術館
https://www.mmat.jp/index.html

 

 


 

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(文:制作 PR-M _PR制作部-1  /  更新日:2021.07.10)

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