インテリアの知識 壁材編 Vol.3 土壁

インテリアの知識 壁材編 Vol.3 土壁

壁とは、材料や建物の内外を問わず空間を分離している垂直の構造物の事を指します。

同じ壁といっても木が少ない地域では、石やレンガを基本素材としてきた組積造の壁が一般的で、古代から日干しレンガなどを用いていました。

伝統木造建築のような軸組構造の壁は、これとは性格が異なります。

日本のように骨組みの間を埋めるつくりの壁は、高温多湿の気候の地域に多く、室内空間も障子・襖などの建具類で分割され、壁自体が少ないこと、軽量なことが特徴となっています。

壁の仕上げについては様々ありますが、今回は土壁について見ていきます。



左官仕上げの中で土壁は最も代表的な塗り壁。

土は極めて原始的な素材であり、身近にあって誰にでも塗れるけれど、塗り壁の可能性を追求すれば追及するほど、高度な技術を必要とする奥の深い材料でもあります。例えばアフリカやアジアの日干しレンガでできた建物や、土の塊である厚い土蔵の壁が見られる一方で、緻密で上品な仕上がりの京土壁などもつくられてきました。土は力強さと、華やかで繊細な性格の両面を持ち合わせた不思議な素材なのです。

 

<身近な材料でつくる土壁>

土壁の基本材料は土、稲藁、砂、水、そして糊というように、身近にある素材からなっています。土壁はこれらを混ぜ合わせて壁に塗るというシンプルな技術です。

土壁に用いられる土とは、いわゆる粘土である。瓦やレンガ、陶器の材料と同じく、山中や地中に眠る粘性のある土を採取して用います。理論的には粘土の原形は岩石であり、岩石が細かくなって砂、さらに粒子が細かくなって粘土になります。

粘土は結晶構造をもち、水分を含むと粘性が出てきます。その特徴を活かして、土に水を加え、時には植物の繊維などを「つなぎ」として練り混ぜ、壁に塗り乾燥させるという方法が土壁の技術として発展してきました。
 

<聚楽は伝統的な京壁の代名詞>

土壁の仕上げ方法は様々ですが、伝統技法の土塗り壁として、前述の京壁はよく知られている仕上げ方法です。
京壁は現在、あらかじめ材料が調合されている既調合材を塗ったものがほとんどですが、本来は左官仕上げの中でも高級で、高度な技術を要する塗り壁です。京壁に用いられる壁土では聚楽土が好まれ、よく使われたことからジュラクといえば京壁の代名詞的存在となっています。京壁に用いられる土は、茶褐色の聚楽土以外にも、京錆土、白土、黄土など様々な色があり、京都周辺の地域でこのような良質な壁土が採取されていたことから、京壁という呼び方がついたとも言われています。

京壁

京壁の仕上げには、「水捏ね仕上げ」、「糊捏ね仕上げ」、「大津壁」などの技法があります。

「糊捏ね仕上げ」・・・角又やフノリなどの海草を煮た糊を加えて、材料の伸びや保水性を上げて作業効率を良くして塗ります。

「水捏ね仕上げ」・・・粘土質の良い色土とみじん砂、みじんすさとを適量に混ぜ合わせ、糊は入れず厚み約2~3mmぐらいで、水もちの良い土(粘土が豊富な土)で水が引かない内に一発仕上げをし、なおかつ鏝波がないように仕上げなければならなく、非常に技術のいる壁です。年月と共に締まり、何十年と寿命があり内・外部に使用できます。

「大津壁」・・・土に石灰を混ぜるのが特徴です。石灰の硬化する力によって、通常の土壁より強度が出て、土の風合いを持ちながら、鏝で押さえると漆喰壁のように平滑な壁にすることができます。また、大津磨きという技法では、大津壁の材料を応用してさらに鏝で磨き上げ、土独特の深みのある光沢を持たせることができます。

※ただし、大津磨きをするためには、良質な粘土を選んで材料をつくり、さらに下地作りや、作業のタイミングなど、全てに熟練の技と高度な経験が必要とされます。それゆえに京壁の中でも最も高級な仕事とされています。


<土壁の表現>

土壁にはいろいろな表現方法があります。
土壁の下塗りである荒壁をそのまま仕上げとし、ひび割れや長いままの稲藁をデザインとして見せたり、仕上げ塗の一歩手前である中塗りの状態を少し粗めの仕上がりとして見せて素材の風合いを楽しむことも可能です。

土と砂とスサのごく単純な組み合わせだけに簡単なようで難しく、けれども仕上がると自然とさまになるのが土壁の良いところです。土壁の魅力とは、土の持つこの変幻自在な力であり、木やその他の素材に溶け込みながらも、その存在を主張する力を秘めていることなのではないでしょうか。


<代表的な土壁の仕上げ>
聚楽仕上げ
・聚楽土水捏ね仕上げ
京壁の代名詞といわれる上級仕上げ。茶室などの外部、内部に塗られます。糊捏ねにくらべて、素材の表情が現れます。


・聚楽土糊捏ね仕上げ
水捏ね仕上げよりも均一に綺麗な表情。外部には適さず、おもに内部に塗られます。



・本聚楽土・聚楽引摺り仕上げ
あえて、錆波を無造作に作り、少し長めのひだしすさを入れる事により、土壁独自の優しい陰影を表現する壁です。おもに茶室の内・外壁や、庭の塀などに用いられます。


・本聚楽土・聚楽錆出し仕上げ
上記の本聚楽土・聚楽仕上げに、錆やすくした約五厘目前後の鉄粉を配合し、壁に花が咲いた様な「さび」が発生します。さびが発生する期間は約3~8ヶ月です。
※さびが発生する期間は、気象条件や湿度等との関係により、その限りではありません。

 

 

 

 

 

 

 

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(文:インテリア情報サイト編集部-2  /  更新日:2014.11.12)

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