建築・インテリア法律規制の基礎知識VOL.10「排煙設備」

建築・インテリア法律規制の基礎知識VOL.10「排煙設備」

 

建築・インテリア法律規制の基礎知識
排煙設備

 

 

建築の知識はインテリアプランニングをする上でも大切なもの。ここでは、インテリアプランニングをするうえで必要な建築の法律規制知識を身につけます。
 

 

 

第10回目は「排煙設備」です。

排煙設備

■ 「排煙」と「換気」の違い

建物火災における死者の多くが「煙」を原因としている。

統計では一酸化炭素中毒、窒息による死者が40%以上を占めている。この他にも一酸化炭素中毒や酸欠で行動不能に陥って火傷等により死傷した人が存在する。

法律としては建築基準法、消防法により排煙設備の設置が規定されている。前者の立場は「建物内の在館者が、外部あるいは建屋内の安全区画まで避難するまで、避難に必要な空間の煙層高さ、あるいは煙濃度を避難に支障のない程度に保つこと」であり、後者の立場は「建物内の消防活動に必要な空間の煙層高さ、あるいは煙濃度を消防活動に支障のない程度に保つこと」と言える。排煙設備とは、上記の目的を満足させるために設置されるものである。
 

ここで、「排煙」と「換気」について少々説明を加えておきます。

換気設備は主に建築基準法に規定されるもので、具体的には居室への新鮮外気の取り入れ、機械による強制換気、駐車場や火を使用する場所への適切な外気取り入れと排出、と言う「空気を入れ替えること」である。それに対して、「排煙」は煙を外に出すのが目的で、自然に外へ出す方法と、機械を使用して強制的に外へ出す方法が考えられる。

「窓」は排煙と換気の両方を兼用することができるが、それぞれの法律で定められた基準を両方とも満足させることが当然求められる。

「換気」・・・空気を入れ替えるのが目的

「排煙」・・・煙を外に出すのが目的

建物を計画する際に排煙設備の要否を検討することは必須事項である。独立した小規模の店舗では排煙設備を要しない場合が多いが、ビルや大型共同住宅の内部や、商業施設のテナントと言った場合には必要となる場合が多く、法規の最低限の知識を身に付けることは必要である。

 

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今回は、排煙設備が必要な場合のみを想定して話を進める。

■    「自然排煙」と「機械排煙」及び「加圧防排煙」

排煙設備の基本的なものは「自然排煙」「機械排煙」「加圧防排煙」がある。

・自然排煙方式・・・排煙用の窓を開けて煙を自然排煙するもの

・機械排煙方式・・・排煙機を作動させ、排煙しようとする部分の煙を「吸い出す」事により外部に排煙するもの。

・加圧防排煙方式・・避難上の安全区画に外気を加圧導入することで、安全区画及び居室の排煙口より煙を「押し出し」、外部からの煙の流入を防止するもの。
 

「自然排煙」は、通常、外壁に面する部屋であれば自然排煙を第一に考える。

「機械排煙・加圧防排煙」は、地下室や排煙上の有効な開口を取ることができない場合は、機械排煙・加圧防排煙を選択せざるを得なくなるが、通常、機械排煙は自然排煙に比べ費用が高くなるため、予算を念頭に入れて十分な検討が必要となる。

なお、2000年6月の建築基準法改正で避難に関する性能規定化が追加されたことにより、この基準を利用した場合の排煙風量の算定は従来の基準値と異なる。

避難が速やかに出来得るための排煙量が求められ、計算はかなり煩雑であるが排煙設備の縮小が期待できる。

 

■    排煙設備の対象床面積の算定

[図1]に排煙対象床面積、および排煙開口面積の算定例を示す。

店舗は建築基準法上、「居室」となるため売り場や事務所、バックヤードはすべて排煙規制の対象となる。階段、パイプシャフトは法律で設置免除となっており、便所、更衣室、局部的倉庫については仕上げ材料などを基準に適合させることで免除となる。

図1 排煙設備の対象床面積の算定

 

■     排煙設備の設置を免除される部分

[表1]に平成12年建設省告示1436号に規定される排煙設備が免除される部分を示す。

従来あった昭和47年建設省告示第30号、31号、32号、33号がまとめられたかたちになっている。居室(居住、作業等のために継続的に使用する室)、室(居室以外)の規模と内装の仕様を制限した上で、排煙設備設置免除としている。たとえば、表中のハ(3)、(4)により、床面積を100㎡以内に防火設備で区画し、壁及び天井の仕上げを準不燃材等で仕上げることにより排煙設備の緩和を受けることができる。ただし、廊下、地階には適用されないことを注意。

また、行政によっては、ハ(3)、(4)については避難のための廊下との位置関係や扉の位置などについて細かに指導が出る場合があるので注意。

確認申請において、この免除規定を使用する場合は申請図面にどの項による免除であるか記載を求められるので十分理解しておく必要がある。

 

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■     排煙上有効な開口面積の算定方法

[図2]、[図3]に排煙上有効な開口の面積の算定方法を示す。自然排煙の場合は、排煙上有効な開口(A)を排煙対象床面積(S)の1/50以上確保することが必要である。外部に面した開口部すべてが有効なものにならない。基本的に天井から80cmまでの範囲に入る開口が排煙上有効とされる。防煙垂れ壁が設置されている場合は、垂れ壁は天井から50cm以上必要であり、垂れ壁の高さかつ、天井面から80cm以内の部分が有効開口となる。引き違い窓の場合は片面だけが有効であり、内倒し、外倒し窓については図示した部分が有効範囲となる。

なお、商業施設や店舗では防犯のためにシャッターが設けられている場合があるが、このシャッター(リングシャッターは除く)が、前述の開口部を塞いでしまう場合には有効開口とは認められないので注意が必要である。

 

図2 排煙に有効な開口の算出方法(1)

 

図3 排煙に有効な開口の算定方法(2)

■ 窓の有効換気面積  ※有効換気面積(窓面積に対する倍率)

居室には、原則として換気のための窓を設け、その換気に有効な部分の面積は、居室の床面積の1 /20 以上としなければならない。
この場合の有効な部分とは、直接外気に開放できる部分をいい、隣地境界線までの距離の条件は特にないが、25cm 以上必要とされている。

窓の形式により有効換気面積は表のように考えられる。
ただし、ふすま・障子等で仕切られた2室は、1 室とみなす。(建築基準法第28条第4 項)

 

令和元年6月施行 政令・省令対応 Q&A 改正建築基準法のポイント

 

 

■     その他の注意事項

基本的な注意事項

(1)       防煙区画は500㎡以下とする(建設省告示により地下街の場合は300㎡以下)。

(2)       排煙口には手動開放装置を設けること。(手動開放装置は床から800mm~1500mmの間に設置する。)

(3)       排煙口は、その防煙区画内のあらゆる位置から、1つの排煙口まで、30m以内となるように配置すること。[図4]

図4 排煙設備の対象床面積の算定

(4)       防煙壁、防煙垂れ壁は不燃材料で造りまたは覆ったものであり、可動式の防煙垂れ壁を使用する場合は防炎性能評定品を使用する。

(5)       機械排煙の場合は、床面積1㎡あたり毎分1㎥の排煙量を確保する。

(6)       機械排煙機は、毎分120㎥以上、かつ最大防煙区画の床面積1㎡あたり、毎分2㎥以上の排煙能力を必要とし、非常電源作動できるようにする。

(7)       機械排煙機、排煙ダクトは不燃材料で造られ、かつ堅ダクトは専用のシャフト内に設置し、排煙機はその最上部に設置とする。

(8)       自然排煙と機械排煙を隣接する防煙区画でそれぞれ使用する場合は、区画は防煙壁で区切られなければならず、防煙垂れ壁では認められない。

 

 

 

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(文:インテリア情報サイト編集部-2  /  更新日:2013.09.11)

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