世界があこがれる職人の技 注目されるわけ

伝統工芸が注目されるわけ

 

現在、多くのデザイナーや建築士が、伝統工芸の職人たちと一緒になって様々なプロジェクトを立ち上げていることは、雑誌やインターネットなどで皆さんも既にご存知だろう。このような動きは、最近になって始まったわけではなく、何年も前からデザイナーは伝統工芸を注目し、今までに様々なプロダクトが生まれている。今になって、ここまで注目され、取り上げられるようになったのは、消費者の生活スタイルや価値観の変化が関係しているように思われる。そして、今回の特集を通し今後のビジョンも見えてきた。



伝統工芸が注目されるわけ

いいもの(本物)を長く使う時代にマッチしている


大量生産、使い捨ての時代が終わり、世界に1つしかない自分だけのお気に入りを、愛着をもって長く使う若者が増えてきた今の時代に、伝統工芸品はとてもマッチしている。お客様の要望を聞き、相談しながら一つ一つオーダーメイドで、作り手も使い手も納得したものをつくりあげる。また、使用される材料は長年その土地で取れるもので、その製品に適した最高級のものを使用するため、とても丈夫で長く使えるものが多い。


伝統工芸,愛着をもって,長く使う



新たなコミュニケーションスタイル
 

昔に比べ、人とのコミュニケーションが極端に少なくなった現代社会の中で、ひとのぬくもりやあたたかみを「モノ」に求める傾向にあるのではないだろうか。職人の作り出すモノの中に、人と人の繋がり、手作りのあたたかみ、自然のぬくもりを感じることができる。そんな新しい形のコミュニケーションが生まれているのではないだろうか。


社会貢献へとつながるライフスタイル
 
自分のライフスタイルがそのまま社会貢献へと繋がっているという構造がある。伝統工芸品の原材料は、長い間吟味された、人と自然にやさしい材料が使われている。その商品を選んで買うことが、環境保護やエコへと間接的に繋がっているのだ。また、伝統工芸品が売れることによリ、職人の仕事が増え、その職人を目指す若者が増える。それは、若者が地方へ戻るきっかけとなり、地域活性化へ繋がっていくであろう。

 


 


 


伝統工芸の未来

現代人か求める「いいモノ」とは
 
ここ数年の間で、インテリアショップや百貨店でも、新しい形の伝統工芸品を目にする機会が増えた。しかし、注目されているのと売れているかは別である。伝統工芸品を購入する若い消費者は、比較的厳しい目を持っている人が多いように感じる。「いいモノ」と一言でいっても、今の時代に必要とされる「いいモノ」とは、単に本物という意味だけではなさそうだ。伝統によって守られてきた素材のよさや技術が感じられ、 ハイセンスなデザインで、尚且つ普段使いが出来、適当な値段のモノでなければ手を出さない。


本当に欲しいモノをデザインする

まだまだ期待が売上より勝ってしまうのは、消費者が本当に必要としているモノがデザインされていないからではないだろうか。昔、伝統工芸品が生活の必需品であったように、現代の生活に密接な伝統工芸品を生み出さなければならないだろう。それは決して特別なものであってはならない。デザイナーがデザイナーとしての個性を出すことは大切なことだが、その個性が邪魔をしてしまうケースが多いように感じる。伝統工芸を扱う場合、その土地の特徴、材質、伝統技術について知る事が必要不可欠であり、それを踏まえた上で、それらの良さを最大限に引き出す斬新なデザインを考え出さなければ、他のプロダクトに勝つことは難しいのだろう。


機械と手仕事



手仕事×機械

伝統工芸には何百年という歴史がある。
何百年と続き、受け継がれた理由の1つに、時代と共に変化し、適応してきたことがあげられるのではないだろうか。手仕事をする職人の多くが、大量生産や機械生産について、抵抗や反発があることは知っている。
しかし、機械を上手く利用し、生産量を増やしコストダウンすることも、次の世代に残して行く為の必要な変化なのではないだろうか。機械に頼れる部分は頼り、手間をかけるべきところを手仕事で行う、そんな機械と手仕事のバランスが大切になってくるのではないだろうか。
職人×デザイナー×機械。今後この3つがキーワードになっていくであろう。


世界ビジネスへと繋げる

今後のビジョンで必要となってくるのは、マーケットの場をもっと海外へ広げていく事であろう。日本国内だけでの消費には限りがある。日本経済が安定する為には、日本の「いいモノ」をもっともっと外へ発信していく必要があるのではないだろうか。
既に日本の伝統工芸の技術の高さは世界に知られており、ファンも確実に存在する。彼らはプロダクトのクオリティーだけではなく、その奥にある作法であったり、情であったり、精神的なものをきちんと感じ、そこに共感し賞賛してくれている。今後、まだ日本の伝統や文化へ触れたことがない人たちへ、職人×デザイナーが生み出すプロダクトや空間によって、どれだけ内なる部分を伝えられ、価値を高められるかが課題となるであろう。
そして大切な事は、彼らの現在のライフスタイルにどのようにマッチしているか、取り入れ方を「具体的に見せて、体験させる」プレゼンをしていくことが必要ではないだろうか。


 

関連記事

・世界があこがれる職人の技 伝統工芸01

・世界があこがれる職人の技伝統工芸02

 

 

tani mayumitani mayumi
自然との共存、未来に残すべき伝統をテーマに、デザイナーとしてできる事を追求し、具現化しながら、物・空間に新しい命を吹き込んでいく。2006年から株式会社Wonderwallで5年間店舗設計に従事し、数々の海外物件に関わる。2011年に独立後は、現在のニーズを満たすサスティナブルデザインと、洗練された日本の技術を融合させ、新しい日本のデザインを世界へ広めていくミッションをもって活動を始めている。
 

 

(文:谷 真弓  /  更新日:2011.10.21)

この記事へのメンバーの評価

  
  • まだコメントがありません。

バックナンバー

Knowledge and Skill

Group Site

ページトップへ