【インタビュー】今も20年後も愛されるデザインに取り組み、ものづくりで世界に挑戦し続ける日本企業


北海道(旭川・東川町)のTIME & STYLE FACTORYで働く人々  
画像:(株)プレステージジャパン提供

 

5.デザイナー、職人(技術者)、メーカーとの程よい役割関係とは?
 職人(技術者)として生きることは幸せ?

Q:職人(技術者)、メーカー、デザイナーはどのような関係でしょうか?
職人(技術者)として生きることは幸せだと思われますか?

日本のものづくり産業は、デザイナーが形を描いてそれを職人(技術者)がつくり、そしてメーカーやショップがプレゼンテーションして売って行く、どの分野もフラットな形で役割分担ができています。

消費財ものづくり産業も同じで、空洞化さないように、若い人がそこで仕事をしたいと思う産業となればいいと思っています。

それには収益もきちんと出せるようにマーケットを広げていきます。単にモノだけを流通させているのではなく、長く使ってもらえるように上質な素材を使い、機械加工と伝統的な職人技を巧みに組み合わせ造り上げている製品を継続的な発信力で丁寧に伝える必要があります。

製品をどのようにしてできているかを評価せず、収益しか考えない仕組みになっている仕事は続けていくには辛いものがあります。

今や購入ターゲットは年齢や金額だけではくくれなくなっています。年齢でも金額でもなく、フィロソフィー(思想)、センス(価値観)やベースのコンセプトが大事になってきています。

先にお話したように木材を大量に消費するハウスメーカーなどの建設業が参入することで、森を守るため地方の林業が盛んになります。将来的には高齢者の方々も巻き込んで、収益性だけをみるのではなく、それで食べていけるかをも超えて、歴史、素材、風土をリスペクトして、ものづくりを生業にしている人々がなんかリッチだよね、心豊かに生活しているよねとみんなが感じられ、素敵な仕事としてやっていくことに手ごたえを感じる分野となればいいと考えます。

 


北海道(旭川・東川町)のTIME & STYLE FACTORYで働く人々   
画像:(株)プレステージジャパン提供

製品づくりには、製造技術やデザイン、ビジネスセンス、コミュニケーション能力などの他、全体を俯瞰することが必要です。これには粘り強く考えて、企業として日本の工芸や伝統を生かせないのか、進化しながら生かせないのか、絶対に発展させていきたいと強く願いながらブランドを育てていく信念があれば、日本の消費財は世界に広がるはずです。

日本の消費財ものづくり産業は世界でもっと躍進すべきで、ロングスパンでブランドを作っていこうと考えている企業が多くなればいいと思います。それには世の中がどのような価値観でモノが必要とされているのかを見極めることが大事です。

日本のインテリアの良さは素材と仕上げです。家に入ったところから感じる、やわらかい手作り感の素材で仕上がった落ち着いた空間は心をやすらげます。それを感じてもらえる空間こそが心穏やかに過ごせる日本のインテリア文化の原点だと思います。

 

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今回、吉田氏が提案する日本の元来ある素材を使って日本のインテリア文化を世界に邁進させる話はたいへん興味深いもので、特に木の素材活用は、山々の手入れにもつながり木の活用が広がればよいと思いました。

山林を手入れせずこのまま放置すればどんどんと廃るだけで、結果、電力供給の不安定要素が高い再生可能エネルギーの太陽光パネルが山々を覆い、土砂災害や農業用水、井戸水の汚染などの問題を引き起こしています。現在、太陽光パネルに覆われてきている山々がふえてきている日本の国土。この先どうなるのか想像するだけでも不安になると多くの山林住民が訴えています。

一方、 2024年度からは国税として、国内に住所がある人から1人1000円、住民税に上乗せする形で「森林環境税」が徴収されます。「森林環境税」は2015年にフランスで開かれたCOP21で採択された「パリ協定」の枠組みのもと、温室効果ガスの排出削減目標の達成、災害の防止などの目的で2019年に法律が成立されたものです。

その山々の手入れのために政府は外国人労働者に頼ろうとしています。

最近では為替相場の円安進行の為か、発育していない細丸太が近隣諸国へ大量に輸出されている情報もあります。

政府はなにをやろうとしているのでしょうか。税金を使って賃金の安い外国人を雇い、木を大量に伐採し、それらを近隣の途上国に安く売って、その差額を税金で埋め合わせをするということでしょうか。そのあとの山々には太陽光パネルが覆われるのでしょうか。近隣の途上国に安く売った木材で作られた安い家具が、また日本にやってくるということでしょうか。

このままでは30年後には日本の山々は緑におおわれた山林はなくなって、ただのはげ山になっているかもしれません。30年は長いようであっという間の年月です。

この税金がどのように活用されるのか具体的に示されていない中、いろいろな想像をしてしまいます。

現在、今から34年前の1989年12月29日に記録した日経平均株価3万8915円越えの最高値更新に沸いています。ですが、日本経済が上向く徴候はあるのの、インフレに賃金上昇が追いついていないなど、まざまな点で厳しい状況は続いています。明らかに34年前のバブル経済のときは違い、われわれ一般国民には実感が感じられません。

30年間続いたデフレや賃金上昇なしは想像以上に日本経済復活に足かせとなっています。モノの値段が下がり続けたことの恐ろしさを今初めて感じ、それを取り戻すのにどれだけの時間と痛みが必要なのかなかなか先が読めません。

日本は人口減少が続いており、これから多くの国でも人口減少が起きていくといわれています。これまで世界は人口増加前提で経済活動をしてきましたが、「人口増に依存しない」経済活動を先進国として最初に向き合うことになったのが日本です。とても難しい舵取りが必要です。

ですが、日本にはこの難しい舵取りを打ち勝つ「丁寧な暮らし」という文化があります。

「丁寧な暮らし」とは何?と思われる方もいらっしゃると思いますが、日々の何気ないことに手間と時間をかける暮らしのことで、ありきたりとも思える日常に向き合い、自分なりの心地よさを見つけることです。

金額が高い安いではなく洗練されたアイテムを大事に、こだわりを大切にしていく生活。

便利グッズなどが100円で簡単に買えてしまうこの時代に、それが本当に必要なのかをよく考えて購入するということは「丁寧な暮らし」への第一歩です。生活の中にこだわりのものが増えてくると自然にものを大事にして無駄なモノを買わずになります。

無駄なモノを買って捨てていくのが循環した経済活動だという人もいますが、はたしてそうでしょうか。人口減少が続けばおのずとモノの消費は減っていきます。モノを作れば作るほどゴミとなるのです。これからの製品は数ではなく価値が大事になっていくのです。

それが経済の上昇へとつながるのです。少し時間がかかりそうですが、そのときこそ、国民一人ひとりが本当の豊かさを実感できる日本になるのではないでしょうか。

最後に、毎回突然のインタビュー依頼にも関わらず、お忙しい中、貴重なお時間をとっていだきました(株)プレステージジャパン代表の吉田氏には感謝申し上げると共に、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。そして、10年後、20年後には日本のインテリア・家具製品が世界中で大切に使われていることを切に願います。

 

2024年1月5日、タイムアンドスタイル東京ミッドタウン(六本木)店にてインタビュー

 

 

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2024.03.25)

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