【コラム】パリの色 heritage×modern


 

パリの色

 

パリ の若者が、日本の伝統工芸南部鉄器を、自宅でお茶を飲む際に使用していることをみなさんはご存知だろうか。南部鉄器といっても、日本でイメージする黒いものではなく、とてもカラフルな南部鉄器だ。ある時、パリの人からの依頼で、鉄器に色を焼き付けたのが始まりらしい。今では、人気のカフェやレストランで様々な形、色の南部鉄器が見られるようになった。
 


 

パリの人がモノにカラフルな色をつけた例はそれだけではない。代表的なお菓子、マカロンもその一つである。16世紀にイタリアから伝わったマカロンは、アーモンドパウダー、砂糖、卵白といったシンプルなモノだった。その後、中にクリームを挟んだ、カラフルなマカロンがパリで開花し、「マカロン・パリジェンヌ」と呼ばれるようになった。
パリの街を歩くと、甘く香る洋菓子屋さんのショーウインドウに、色とりどりのマカロンが並べてあり、パリの街を一段と明るくしているように感じる。
 

東京 の街を歩けば、パリ以上に様々な色を目にする。しかし、パリで見る色と、東京で見る色には、大きな違いがあるように思えた。

東京で見る色は、個々で存在しているのに対し、パリで見る色は歴史的建造物との調和の中で存在している。

日本で新しいお店をつくる時、規制がほとんどないため、それぞれのお店がそれぞれの色、形の看板をつける。その反面、パリには街の景観を守る条例があり、看板や広告の規制がとても厳しい。それによって、パリに住む人たちには、街全体をトータルデザインしているという感覚があるのではないだろうか。

彼らは、歴史や伝統を守りながら、その中での遊び方を知っているように見える。日本のカラフルな南部鉄器が受け入れられた理由も、そんな背景が関係しているのではないだろうか。

日本の洗練されたデザインとは、シンプルで、削ぎ落された美とされる。

すでに、この日本特有の美に対しての世界評価は高い。
 

これからは、日本独自の美を残しつつ、歴史や伝統を守りながらも、現代の好みにあった色やデザインで、思い切って遊んでみるのもよいのではないだろうか。
伝統工芸の職人と、若いデザイナーがコラボして、色々なプロジェクト発表する今、それらが新しい日本のデザインとして、世界の人に受け入れられる日は近いのではなだろうか。


 

tani mayumitani mayumi
自然との共存、未来に残すべき伝統をテーマに、デザイナーとしてできる事を追求し、具現化しながら、物・空間に新しい命を吹き込んでいく。2006年から株式会社Wonderwallで5年間店舗設計に従事し、数々の海外物件に関わる。2011年に独立後は、現在のニーズを満たすサスティナブルデザインと、洗練された日本の技術を融合させ、新しい日本のデザインを世界へ広めていくミッションをもって活動を始めている。
 

 

(文:谷 真弓  /  更新日:2012.07.13)

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