企画展「写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち-」 開催

 

 

21_21 DESIGN SIGHT 企画展
写真都市展
- ウィリアム・クラインと 22世紀を生きる写真家たち -

 


21_21 DESIGN SIGHTでは2018年2月23日(金)~6月10日(日)まで、企画展「写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち-」を開催します。展覧会ディレクターには、数々の著書や展覧会の企画で知られる写真評論家で美術史家の伊藤俊治を迎えます。

写真が発明されてまもなく2世紀になろうとしています。この200年近くに生み出された写真は天文学的な数に及び、テクノロジーやネットワークの革新とともに、その表現形式や制作手法、つくり手と受け手の関係にも大きな変化がおこっています。20世紀を代表する写真家ウィリアム・クラインは、写真、映画、デザイン、ファッションのジャンルを超えた表現と、ニューヨーク、ローマ、モスクワ、東京、パリなどの世界の都市を捉えた作品で、現代の視覚文化に決定的な影響を与えました。
 

本展では、クラインの都市ヴィジョンとともに、斬新な眼差しで 21世紀の都市と人間を見つめ、従来の写真のフレームを大きく飛び越えようとする日本やアジアの写真家たちを紹介します。22世紀をも見据えた未来の写真都市の鼓動を描きだす、ヴィジュアル・コミュニケーションの新しい冒険をご覧ください。

 

 

 


ウィリアム・クライン「Self portrait, Paris 1995 (Painted 1995)」

 

 

 

| ディレクターズ・メッセージ
写真は、もはや地球というスケールを飛び越え、新しい星のようになってしまったのではないでしょうか。星雲状になった無数の写真の群れがもう一つの惑星のように地球の周りを覆っている。写真が誕生してまもなく2世紀が過ぎようとしていますが、この間に生み出された写真は天文学的な数に及び、特にデジタル・テクノロジーやネットワーク・メディアの革新が連鎖した20世紀末以降、その厖大なイメージは今や粒子化した圏(スフィア)となり、地上のあらゆる光景を記録するもう一つの次元をつくりだしているかのようです。

この展覧会は20世紀を代表する写真家ウィリアム・クラインの写真を出発点に、20世紀から21世紀へ至る都市ヴィジョンの変貌をかつてないダイナミックな写真の見せ方で提示しようとするものです。
 

クラインは1956年に写真集『ニューヨーク』で衝撃的なデビューを果たし、その後、ローマ、モスクワ、東京、パリ…と世界を疾走しながら次々と挑発的なイメージを放射し、また写真ばかりではなく映画、絵画、デザイン、ファッションといったジャンルを跨ぎながら現代視覚文化に決定的な影響を与えたスーパースターです。

そのエネルギッシュなクラインの写真を核に、21世紀の都市と人間を見つめ、写真の枠を乗り越えてゆこうとする日本とアジアの若いアーティストたちの野心的な試みを対比させてみたいと思ったのが、この展覧会のきっかけです。クラインの足跡を辿ると、その軌跡がイメージの巨大な実験場だったことがわかります。

ブレボケアレ*といった画像の揺籃、タイポグラフィとイメージの劇的な新結合、都市の底知れない力を浮上させるコラージュ、壁や建築と写真の融合、ガラスの中に宙吊りにされた写真と、様々な視覚実験を繰り返してきました。今ではありふれた展開のように見えますが、当時のクラインが時代と対決しながら挑戦してきた数々の試行は、物質と非物質の狭間で大きく揺れ動くイメージの時代の今こそ、再発見しなければならないもののように思います。

亡くなった日本を代表する思想家の多木浩二さんが指摘したように、クラインの写真は「作品ではなく、“写真の概念”を示す。だから常に新しい」のです。

この展覧会に参加する日本とアジアの若いアーティストたちは、それぞれ独自の想像力と創造性を持ちながら、クラインの写真の記憶と冒険を受け継いでいるように思います。彼らの多元的な表現世界は一つ一つの生きた小惑星であり、現代のヴィジュアル・コミュニケーションの均質性を打ち破る生命力を内包しています。クラインの『ニューヨーク』はもともとアメリカのどの出版社も引き受けてくれなかったのですが、パリのスイユ社から「ル・プティ・プラネット(小惑星)」という旅のシリーズ本を編集撮影していたあの偉大な映画監督クリス・マルケルが、この写真集を出版できなければ自分が出版社を辞めるとまで宣言し、ようやく陽の目をみることができました。

「カメラを持って都市に出ると、あらゆるものが私を興奮させる」とクラインは言いましたが、これらの小惑星の集合に秘められた22世紀都市の瞬きや息吹きを感じながら、写真の未来に想いを馳せたいと思います。

伊藤俊治

*ブレボケアレ:対象の動きがブレた不鮮明な写真、ピントがボケた曖昧な写真、荒れた粒子の写真が既存の写真美学を乗り越えるために用いられた。


|展覧会ディレクター

伊藤俊治 Toshiharu Ito

多摩美術大学美術学部教授を経て、現在、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授。芸術、教育、社会活動に多数取り組み、異業種交流のデザインネットワークである東京クリエイティブの設立企画運営、異文化融合と共同創造の実践的教育機関である大阪インターメディウム研究所の企画運営、都市創造型のワークショップスタジオ/東京アート&
アーキテクチュア&デザイン(ADD)スタジオのディレクション、国際交流基金国際展委員、文化庁芸術文化振興基金審査委員、東京都写真美術館企画運営委員、川崎市民ミュージアム収集委員、相模原市写真芸術祭特別運営委員、彩都国際文化都市企画委員、読売新聞読書委員、NTTインターコミュニケーション・センター・コミッティ、大阪インターメディウム研究所講座統括ディレクター、東京 ADDスタジオのディレクター、2005年日本万国博覧会デザイン委員会委員長などをつとめる。主な著書に『写真都市』(冬樹社)、『20世紀写真史』(筑摩書房)、『ジオラマ論』(リブロポート)、『20世紀イメージ考古学』(朝日新聞社)、『電子美術論』(NTT出版)、『情報映像学入門』(オーム社)、『情報メディア学入門』(オーム社)等多数。

 

 

 


ウィリアム・クライン「Wings of the Hawk, New York 1955」

 


ウィリアム・クライン「Red Light, Piazzale Flaminio, Rome 1956」

 

 


| 展示内容(展示順)

ウィリアム・クライン
20世紀を代表する写真家ウィリアム・クラインの写真と映画、グラフィック、コンタクトプリント、写真集、巨大写真などの多種多彩なイメージを一堂に集めて展示。ジャンルを跨いで自由奔放な都市と人間のイメージを展開するクラインの視点を紹介し、本展のイントロダクションとする。

 

ウィリアム・クライン+TAKCOM
クラインの捉えたニューヨーク、ローマ、モスクワ、東京、パリの各都市を、映像作家 TAKCOMが浮遊感や流動性とともに、万華鏡や空飛ぶ絨毯のように表現する。200点あまりの写真、タイポグラフィと抽象画像、映画のスティル写真も組み合わせ、ギャラリー 1の空間全体を使ったマルチ・プロジェクションを行なう。
 

西野壮平
都市を歩くこと、旅することを通して得た個人的体験をベースに世界の都市という構造体を見つめ、生命が移動することの根源的な意味を探る西野壮平。自身の日々の行為を可視化し、多数の視点から撮影した写真を組み合わせることで、時間や場所が錯綜する架空の視点から見た都市の地図をあぶり出す。細密で力のこもった大判のフォトコラージュを展示。
 

沈 昭良
台湾を代表する写真家沈昭良は、台湾の夜の名物、大型トラックステージを使った台湾綜芸団の生き生きとした情景、トラックの組み立てから撤去までの 24時間を撮影した高速度撮影映像を組み合わせ、アジアの深い混沌を浮かびあがらせる。カラー写真、高速度撮影映像を組み合わせたフォトインスタレーションで、移動祝祭トラックのエネルギーを表現し、静から動へ、動から静へとダイナミックに流れる特別な時間を生成させる。
 

水島貴大
水島貴大は、自身の代表的な写真集『Long hug town』から100点以上のカラー写真を、壁一面に展示する。彷徨う都市、夜の東京の路上の狂騒と底知れないエネルギーを全身で写し取る水島の、場所や愛と深く結びついた表現を紹介する。

 

石川直樹+森永泰弘
写真家石川直樹とサウンドアーティスト森永泰弘のコラボレーション・ユニット。ギャラリー 2の空間に、写真と音の有機的な結合の場を実現。「惑星の光と声」をテーマに、地球を一つの惑星とみなすようなアジアの各都市の騒めきを写真作品とフィールドレコーディングの音像でダイナミックに表現する。

 

安田佐智種
視点を天地逆転させるかのように、高所から見下ろした超高層ビル群の写真を放射状に配置して繋ぎ合わせ、めくるめ目眩く都市のヴィジョンを提示する安田佐智種。針や棘のように身体に突き刺さる地勢学的な陶酔へ誘うシティ・ヴューを探求する、デジタル合成写真によるフォトインスタレーションを展示。
 

多和田有希
人間の精神的な治癒をテーマに、自ら撮影した写真の表面を削り取ったり、燃やしたりする手法で都市や群衆の独特な霊的ヴィジョンを生み出す多和田有希。写真でも絵画でも彫刻でもない、人間の精神の奥底に秘められたものを引きずりだすような作品群は、写真発明時代の魔術的なオーラを放つ。本展では、大判のインクジェットプリントを手作業でスクラッチした「ホワイトアウト」シリーズを中心に展示。

 

須藤絢乃
多国籍な人間の顔をデジタルで合成した新しいセルフポートレイト、絵画と写真を往還するファッション・ポートレイト、実在する行方不明の少女を自ら再現する作品で知られる須藤絢乃。自身の代表的な写真集『幻影』と写真集『面影』からのセレクションを展示する。

 

勝又公仁彦
勝又公仁彦は、光と知覚、装置と現象、内界と外界を横断する独特の繊細な感受性で都市を表象する作品で知られる。「Panning of Days」シリーズ、「Hotel Windows」シリーズ、「Unknown Fire」シリーズ、「Skyline」シリーズなどからセレクション。

 

朴 ミナ
都市の中の巨大水族館に蠢く集団の熱と呼吸を、ブルーの闇の力とともに鮮やかに活写する新進写真家の朴 ミナ。カラー大判写真と、呼吸音や水の流れる音などを使用したサウンドインスタレーションを行なう。
 

藤原聡志
藤原聡志は、都市の細部と路上に潜在する人間の無意識的な熱と力を、スーパーリアリズムを思わせる緻密な映像で表現し、写真画像の秘められた可能性を模索する。本展では、「Scanning」シリーズからのセレクションを展示する。

 

 


ウィリアム・クライン(ロビー展示イメージ)

 

 


ウィリアム・クライン+TAKCOM(ギャラリー1展示イメージ)

 

 

■関連イベント
○ オープニングトーク「沈 昭良の写真について、アジアの写真の特性について」
2018年2月24日(土)14 :00.15:30 出演:沈 昭良、伊藤俊治

○ トーク「テクノロジーと表現」
2018年3月17日(土)14 :00.15:30 出演:ドミニク・チェン、TAKCOM、他

○ トーク「現代美術と現代写真」
2018年5月26日(土)17 :00.18:30 出演:椹木野衣、伊藤俊治

*会場:21_21 DESIGN SIGHT/参加費・参加方法は、21_21 DESIGN SIGHTウェブサイトをご覧ください
*この他にも開催期間中、多数のイベントを企画しております

 

 

【開催概要】

21_21 DESIGN SIGHT企画展
「写真都市展 -ウィリアム・クラインと 22世紀を生きる写真家たち-」
会期:2018年2月23日(金)~6月10日(日)
休館日:火曜日(5月1日は開館)
開館時間:10:00~19:00(入場は 18:30まで)
入館料一般:1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー 1、 2
        東京都港区赤坂 9 -7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
tel.:03-3475-2121 
http://www.2121designsight.jp/program/new_planet_photo_city/

アクセス:都営地下鉄大江戸線「六本木」駅 東京メトロ日比谷線「六本木」駅
             東京メトロ千代田線「乃木坂」駅より徒歩 5分
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
特別協賛:三井不動産株式会社
展覧会ディレクター:伊藤俊治
会場構成:中原崇志
グラフィックデザイン:刈谷悠三 +角田奈央(neucitora)
参加作家:ウィリアム・クライン、石川直樹+森永泰弘、勝又公仁彦、
              沈昭良、須藤絢乃、TAKCOM、多和田有希、
              西野壮平、朴 ミナ、藤原聡志、水島貴大、安田佐智種
21_21 DESIGN SIGHTディレクター:三宅一生、佐藤卓、深澤直人
アソシエイトディレクター:川上典李子
プログラム・マネージャー:齋藤朝子

 

 

21_21 DESIGN SIGHT 21_21 DESIGN SIGHT

 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
 TEL: 03-3475-2121
 http://www.2121designsight.jp/

 

 

 

 

 

 

(文:インテリア情報サイト編集部-5  /  更新日:2018.02.17)

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