【フォト・レビュー】アンサンブル・スタジオ展 Architecture of The Earth」

 

 

【フォト・レビュー】
TOTOギャラリー・間で開催の
「アンサンブル・スタジオ展 Architecture of The Earth」

 

 

独自の構法を軸に、建築の可能性を追求する建築展「アンサンブル・スタジオ」の日本で初めての個展が乃木坂のTOTOギャラリー・間で2021年9月12日(日)まで開催中です。


・アンサンブル・スタジオの、日本で初めての個展「アンサンブル・スタジオ展 Architecture of The Earth」を開催 >>

展覧会入場は予約が必要です ⇒ 事前予約はこちら
 

 

本展覧会では、「地球」と「建築」の関係性の探究のなかから生まれたプロジェクトに焦点をあて、アンサンブル・スタジオ独自のリサーチ・設計・建設の過程を、模型や映像を通じて紹介しています。

「アンサンブル・スタジオのからのメッセージを【動画】で公開

 

地球規模の視点と、自然と響きあうような力強い造形

スペインのマドリードに2000年に設立されたアンサンブル・スタジオは、スペインとアメリカを拠点とする設計事務所で、近年はダイナミックな素材の使い方で注目されています。

2016年にアメリカのモンタナ州にあるティペット・ライズ・アート・センターにおいて、見渡す限りの草原の中に、大きなアートワークが設置した屋外彫刻のような一連作品「ランドスケープの構造体」は大きな話題となりました。

展覧会では、3つの異なる空間で、それぞれのテーマ――「アイディアラボ(リサーチ)」、「中庭(デザイン)」、「オーディオビジュアルランドスケープ(施工)」のもとで展開。アイディアから実現化へ、そして再びアイディアへと巡る旅の道のりであり、そして、それは現在も続き、「終わることのない冒険」というテーマを表しています。

 

「アイディアラボ-リサーチ」

アンサンブル・スタジオが、アメリカ・モンタナ州の自然の中に作られた「ティペット・ライズ・アート・センター」のためのアートワークの模型をDIYで制作している動画

 

ギャラリー間の3階会場ではスケールのあるもの、スケールのないものの模型を展示

壁に設置された映像と模型を見比べながら、会場を一周するとより一層彼らに興味が沸いてきます。



 

「中庭- デザイン」

ギャラリー間のテラスに設置されたビルデザインのプロトタイプの模型



まさに未来志向のビルディングで映画スターウォーズなどのSFな世界観


 

 

「オーディオビジュアルランドスケープ - 施工」

彼らの活動は近年、よりダイナミズムを増し、広大なスケールのプロジェクトも手がけるようになりました。

岩に刻まれた古代のモニュメントの痕跡やその建造物、周囲を取り巻く素材に秩序を与えているヴァナキュラーな建築群、ランドアートや土を使った作品などは、大地をとめどなく搾取できる資源ととらえる考え方を超えて、土地や地形をよりいきいきと活かすことができる可能性を示している。-アンサンブル・スタジオ


上階の4階会場ではそれらの建築物の工程から完成までが映像でまとめられている

約48㎢の広大な敷地に点在する、先史時代の遺跡を思わせるような構築物は、大地を型枠に利用しながらも、現代の技術をベースに、モックアップによる検証、コンピューターを使ったモデリングなど、複雑な構造計算と建設プロセスを経て完成しました。



地質上のさまざまな作用に学びながら、アナログな施工方法を開発し、新しい建築言語を見い出しながら、私たちの想像力は探究する価値のある未知の領域へと開かれていく。-アンサンブル・スタジオ

アンサンブル・スタジオによるスペインの住居”The Truffle”
https://www.youtube.com/watch?v=W44flcBu5tw

 

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アンサンブル・スタジオは、アントン・ガルシア゠アブリルとデボラ・メサが主宰する職能横断型チームとして、彼らは単に建物のデザインを行うだけでなく、実験を通して自らの手で考え、建設方法まで考案することにより、他に類を見ない革新的な建築を生み出してきた、というTOTOギャラリー間の紹介文に興味を持ち来館しましたが、良い意味で期待を裏切られました。想像以上の内容でした。

広大なモンタナの草原にワイドに展開するランドスケープ・アート・アーキテクチュア群、外壁と構造に重厚な石積みを使用し巨石を荒々しく積み上げた石造壁面、岩の中にできた穴倉週末住居、地下という自然の中に埋め込んだ劇場など、自然との密接はアンサンブル・スタジオのデザイン・ベースです。

一見、自然物との融合のように見える彼らが作り上げた作品は、自然の巨岩のように見えても、実はRC造などでできた人工的建築物なのです。彼らの建築デザインは、実にシンプルに、地形を読み取り、再び活用し、その堅い表面を補強し、あるいは型枠として利用し、場所のもつ自然の力を利用し、相乗効果を生み出しながら、構築物をつくっていく流れです。

開発段階でロジックを見出していくことは、ミスを軽減することにつながるからと、彼らはそのプロセスをより正確にコントロールするために、 「手と共に思考し、経験する」からと、設計だけではなく施工までを手掛けています。

異なる時期、異なる場所、そして異なる理由のために展開されながら、それらはすべて「建築」と「地球(The Earth)」の関係、あるいは私たち人間が環境に及ぼす影響について熟考する機会を与えてくれのではないかということで、「Architecture of The Earth」では、アンサンブル・スタジオが過去20年間に行ってきた、一連のリサーチや専門的なプロジェクトを紹介しています。

建築模型や図面が会場いっぱいに展示された一般的な建築展とは一線を画した興味深い展覧会でした。

ご興味のある方は是非足を運ばれてはいかがでしょう。

 


 

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《書籍紹介》  ⇒ 立ち読み
スペインとアメリカを拠点に活躍する建築家ユニット。地球規模の視点と自然と響きあうような力強い造形、独自の構法を軸に、建築の可能性を追求する建築家の、日本初の作品集。「大地の建築」をテーマに、リサーチ・設計・建設プロセスを写真、図版、テキストで分かりやすく紹介された1冊。寄稿に、建築家・西沢立衛氏、写真にイワン・バーン氏他。

↓ ↓

【書籍概要】
大地の建築 アンサンブル・スタジオ
著者:アンサンブル・スタジオ:アントン・ガルシア=アブリル、デボラ・メサ
体裁:B5判変形(190×250㎜)並製、202頁、和英併記
ブックデザイン=spread(坂本知子、ダビッド・ロレンテ)

 

 

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大地の建築 アンサンブル・スタジオ [ アンサンブル・スタジオ:アントン・ガルシア=アブリル、デボラ・メサ ]

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2021.06.26)

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