100周年を迎えたコーア・クリントのフォーボーチェア

フォーボーチェアフォーボーチェア

ルド・ラスムッセン家具工房、100周年を記念し

アニバーサリー・エディションを発表

 

1900年代初頭、デザイナーそして教育者として活躍し、デンマークデザインの基盤を作り上げたコーア・クリント。現在も彼の手掛けた家具を製作するルド・ラスムッセン家具工房から、フォーボーチェアの100周年を記念したアニバーサリー・エディションがリリースされました。

現在、カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストアにて、世界限定10脚のスペシャル・エディションとアニバーサリー・エディションの2種類のフォーボーチェアが展示されています(展示は8月末まで)。
 


1914年にデザインされ、1915年デンマークのフュン島にあるフォーボー美術館の開館に合わせ発表された、コーア・クリントのフォーボーチェア。この100周年を記念し、ルド・ラスムッセン家具工房が、最初に製作された椅子へのオマージュとして10脚のスペシャル・エディションを製作するほか、最初の100脚にはシリアルナンバーが付けられるウォルナット材製のアニバーサリー・エディションが発表されます。

コーア・クリントが建築家カール・ペーターセン(Carl Petersen)と共同でデンマーク、フィン島にあるフォーボー美術館の家具を手掛けたのは、1914年。クリントがまだ26歳の時でした。そしてデザインされたのが、デニッシュモダンの起源とも言える名作、フォーボーチェアです。

この椅子はまたデンマークデザイン界に新時代の幕開けを告げる作品だったと言えます。1950年代に大きく花開き、今日世界的に高く評価されるデニッシュモダンの礎となり、世代を超えて多大な影響力を誇る新しい流れを作るきっかけとなった作品となりました。


フォーボーチェアの100周年にあたり、コーア・クリントのデザインがネオクラシズムからモダニズムへ移行する大きな原動力になったと認識を新たにする人は多いと思います。まさにこれが「デニッシュモダンの父」とコーア・クリントが称される所以です。最初に製作された18脚のフォーボーチェアは今日も、総合芸術を唱えるフォーボー美術館の作品の一つとして展示室で使用されています。

フォーボーチェアは、家具工房の老舗ルド・ラスムッセン家具工房で世代を超えて製作されてきました。1869年の創業以来、その伝統的な家具職の技術と数々の歴史に残る名作を製作することで世界的に知られる工房です。「伝統的なクラフトマンシップ、そして歴史的な名作の数々と、この工房を語らずにデニッシュモダンは語ることができません。私どもがルド・ラスムッセン家具工房を傘下に納めたのは、まさにこうした工房への尊敬と愛着からと言えます。私どもは20世紀最初の30年間、つまりフォーボーチェアが大きな影響力を持っていた時代に生まれた名作にも、世界が注目してくれればと期待しています。」とルド・ラスムッセン家具工房および、カール・ハンセン&サン社のオーナー、クヌッド・エリック・ハンセン(Knud Erik Hansen)氏。

 

「世代を超えて継承されてきた高い家具職の技術と伝統。ルド・ラスムッセン家具工房は、まさにクラフトマンシップという言葉がぴったりする工房です。私どもはこれをこれからも大切に保持し、伝えていくつもりです。コーア・クリントは、高い木工技術を重視していました。まさにこれが、フォボーチェアをはじめ数々の名作を生み出した、クリントとルド・ラスムッセン家具工房の長年に渡る共同関係の大きな要因です。フォーボーチェアの100周年は、デニッシュモダンの起源となった椅子に、そしてその父と称されるコーア・クリントに改めて敬意を称する素晴らしい機会だと思います。」とルド・ラスムッセン家具工房のCEO、デヴィッド・オーベル・ローセンクヴィストDavid Obel Rosenkvist)氏。

 

 

SPECIAL EDITION OF THE FAABORG CHAIR
10脚のスペシャル・エディション

100周年を記念しルド・ラスムッセン家具工房では、オリジナルへのトリビュートなるスペシャル・エディションが製作されます。最初に製作されたフォーボーチェアと同様、成長のゆがみなどで生じる杢目が美しく出た素材が使用することを決定し、素材が選別されました。選ばれたのは楡の木です。しかも、この楡の木はルド・ラスムッセン家具工房の中庭に100年間立っていたもの。25前に伐採され特別なモノを製作するために工房に保管されていました。フォーボーチェア100周年を記念するのにふさわしい素材と言えます。

杢目が見える部分は半円形の背もたれに使用されます。杢をもつ木材は、扱いが難しい素材。家具に応用するには、深い造詣と熟練した木工技術、そして忍耐が必要とされます。そして脚にはムク材の楡材、そして貫には突板の楡材が使用されます。オリジナル同様、各部材は色や木目が調和するようにセレクトされ、一脚一脚、独特の味をもつユニークな椅子として仕上げられます。さらにオリジナル同様、背だけではなく座面にも籐が施されます。

スペシャル・エディションは10脚のみの製作され、2015年世界各地で巡回展示される予定です。現時点では販売の予定はありません。

 

item:SPECIAL EDITION OF THE FAABORG CHAIR
designer:Kaare Klint
year:1914
size:W70×D54.5×H73/SH44 cm
material:楡、籐
※限定10脚、現時点では販売の予定はございません。

 

 

NUMBERED ANNIVERSARY EDITION
シリアルナンバーがついたアニバーサリー・エディション

さらにルド・ラスムッセン家具工房から、フォーボーチェア100周年記念し、アニバーサリー・エディションが発表されます。素材はウォルナット材、仕上げはオイル仕上げ、座面には黒のゴートハイド(山羊革)が使用されます。特に最初の100脚にはシリアルナンバーがつけられます。アニバーサリー・エディションの参考上代は:801,000円(税別)です。

item:NUMBERED ANNIVERSARY EDITION
FAABORG CHAIR
designer:Kaare Klint
year:1914
size:W70×D54.5×H73/SH44 cm
material:ウォルナット、籐、ゴートハイド(山羊皮)
price:¥801,000(税別)
※初回ロッド限定100脚にシリアルナンバー付きます。

 

 

DESIGNER PROFILE

Kaare Klint 1888-1954

1900年初頭から家具デザイナーとして活躍し、デンマークデザイン界に大きな足跡を残すコーア・クリント(1888-1954)。1914年発表のフォーボーチェアをはじめ、1929年のバルセロナ万博のデンマークパビリオン、1933年発表のサファリチェアなどで世界的に知られる家具デザイナーです。
建築家の父、ペーダー・ヴィルヘルム・イェンセン・クリント(Peder Vilhelm Jensen-Klint)を持つことから、幼少時からすでに建築は生活の一部になっていました。しかしクリントは建築よりも、家具デザイナーとしてデンマーク建築界に足跡を残すことになりました。1924年コーア・クリントは王立芸術アカデミーに家具科を創設し講師、そして後に教授として数多くの才能あふれるデザイナーを育成し、デンマークデザインの黄金期(1945-1975)の基盤を作りあげました。自身の作品と教育を通し、クリントはデンマーク家具界の巨匠と言われるハンスJ.ウェグナー、モーエンス・コッホ、アルネ・ヤコブセン、ボーエ・モーエンセン、そしてポール・ケアホルムなどに大きな影響を与えたのです。

改革者として知られるコーア・クリントはデザインの歴史、実用的な機能の研究を通し建築や家具デザインの基本となる概念を教育。それまであった建築や家具デザインの手法を大きく改革していきました。最初にフォルムがあるのではなく使用する用途、それに適したサイズなど、その家具に求められる要素があってはじめてフォルムを決定されるという手法が取られました。しかもクリントはそれまで築かれてきた家具職の伝統にも敬意を表していました。伝統を継承しつつ、機能的なデザインへとデンマーク家具を改革していったのです。

クリントは個々の家具に求めらる用途と機能を重要視したばかりでなく、家具が空間にさり気なく収まることにも配慮しました。さらにクリントデザインの大きな特徴となっているのがフォルムと素材の調和です。またクラシック家具や欧州以外の文化に影響を受けた作品が多いのも大きな特徴です。機能とフォルムが融合した、世代を超えて使用される機能的な家具を追求したのです。

コーア・クリントは、プロポーションと空間を把握する素晴らしい才能を持っていました。また、人間が使用することを基本としてデザインすることから、その作品は人間味あふれる家具とも評価されています。実際クリントの家具は、人間の体や動きを入念に検討しデザインされています。シンプルなフォルム、質の高い機能性、時代を超えて通用するデザイン、そして妥協の無い素材と製造工程。こうしたことから、コーア・クリントの家具はここにきて今まで以上に需要が高まっています。

 

 

ルド・ラスムッセン家具工房について

ルド・ラスムッセン家具工房は、常に揺るぎない伝統的な家具職の技を基盤に、クラフトマンシップ溢れる数々の名作を世に送り出してきました。家具職人とデザイナーという共同関係を140年以上に渡り重視し、モーエンス・コッホ、オーレ・ヴァンシャー、ポール・ケアホルム、そしてコーア・クリントとデンマークデザイン界が誇る、数々の巨匠デザイナーたちと仕事をしています。そして2011年、国際的に知られたデンマークの家具メーカー、カール・ハンセン&サン社の傘下に入りました。
www.rudrasmussen.jp


 

ルド・ラスムッセン家具工房のロゴは、コーア・クリントが1944年にデザインしたもので、現在も変わることなく使用されています。
 

 

 

 

カール・ハンセン&サン

カール・ハンセン&サンについて

カール・ハンセン&サンは創業100年を超える歴史のあるデンマーク家具メーカー。ハンスJ.ウェグナーの家具を最も数多く製作するメーカーとして知られ、伝統的なデンマークの家具職人技巧を基本に、世代を越えて使用できる耐久性に優れた家具を世に送り出しています。従業員数は230人。すべての製品がデンマーク国内で製作され、世界各国で販売されています。

www.carlhansen.jp

(文:インテリア情報サイト編集部-3  /  更新日:2015.05.23)

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