もう一歩深く知るデザインのはなし~アーツアンドクラフツと民藝

AAC_mingei_head5.jpgイギリスに始まり、様々な国へ波及していったアーツアンドクラフツ運動。20世紀に入ると、日本にも少しずつ情報が入ってくるようになります。

当時日本で特に大きな活動をしたのは、優れた宗教哲学者にして「民藝(みんげい)運動」の創始者、柳宗悦(やなぎむねよし・1889~1961)です。彼は手作りの安価な日用品を大量に収集し、今まで誰も気づかなかった、その自然で素朴な美しさを世間に紹介しました。民藝の思想を世に広めるために、柳は国内外を飛び回っての日用品の収集・調査、執筆活動、目黒区駒場にある「日本民藝館」の設立など、多くの仕事を成し遂げました。
 

aki_oita_fitm.jpg「無心」ということ

そんな柳宗悦の説く「美」について考えてみましょう。彼は美しいものが生まれるための条件として「無心」ということを挙げています。これはつまり「無意識」ということです。

大量の日用品を作ることで生計を立てていた昔の職人たち。彼らは教えられた通りの方法で、ひたすら素早く、できるだけ多く作り続けました。この模様をもっとこうしたら、などと試行錯誤している余裕はありません。

単純作業を繰り返すうちに「自分はいまこれをしている」という意識がとんでしまい、半自動的に手を動かし続けた―そういう経験はないでしょうか?それが「無心」です。

無心で同じものをたくさん作れるということは、技術を完全に身につけたことを意味します。柳は「無心で作られたものの中にこそ、デザインに無駄のない、本当に美しいものが出てくる」と言ったのです。
 

 

Ainu_PHGCOM.jpg「創意工夫」は美の創造に寄与するか?

ウィリアム・モリスの考える美とは、自然の美と芸術の美の融合でした。人間が楽しみながら自分の手と頭で創造することが美の形成に不可欠だ、と彼は主張しました。彼は普通の人の労働としてのものづくりを、できるだけ芸術に近づけようとしたのです。

またモリスは、テキスタイルなどのデザインについて注意点を細かく書き記しています。そこに見えるのは、美しいものを作ろうとする「工夫への意志」です。

しかしこの「工夫への意志」こそが、柳にとっては美を殺すものでした。宗教哲学者でもある彼は、「人間の考えなど仏の前では小さなもの。無心で作ったときこそ仏がものに美を与えてくれる」と考えたのです。そんな彼がモリスデザインを酷評するのも、当然のことといえるでしょう。

 

 

Joseon_dynasty.jpgところで、柳自身は「美とは何か」を語ってはいません。彼は自分が見つけた美しいもののどこが美しいと感じたのかを述べ、それらの美が生まれる「条件」について考察しているだけです。

「美は直観でしか捉えられない」と考えた彼は、美の定義そのものを論じることには興味を持ちませんでした。知識などに頼らず、無心で目の前の「もの」を見なければ、本当の美は分からない。柳はそう説いています。

 

 

 


アーツアンドクラフツと民藝運動、両者の間にはこのように美意識上の決定的な違いがあります。しかし、「芸術家ではなく、普通の人々が手作りした日用品」に美を見出していた点では同じです。

モリスや柳が生きた時代から、日本の産業構造は大きく変わりました。彼らの理想や教えを、いま私たちが忠実に守ることはもちろん不可能です。しかし、「美しい日用品」を考える彼らの思想を何らかの形でつないでいくことは、少なくともインテリアデザインに関わろうとする人には必要だと思います。

今後のものづくりや暮らしを考える時、モリスや柳の思想から得られるヒントは多いはずです。それについて少し考え、「アーツアンドクラフツと民藝」シリーズを締めくくりたいと思います。

 

 

 

 

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(文:PR / 広告_1 制作-クリエイティブ事業部  /  更新日:2013.02.11)

この記事へのメンバーの評価

(3.0 point / 1人の評価)  

  • sarasa さん
  • 分かりやすくまとめてあり、素晴らしいです。
    (2018-08-16 00:51:51)

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