イギリスで開催中の「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」須藤玲子《扇の舞》がオンライン公開


須藤玲子《扇の舞》2020, Fabric Touch and Identity (c) Compton Verney, photography Jamie Woodley

 

 

イギリスのコンプトン・バーニー・アート・ギャラリーにて開催中の
イギリスの現代アート展「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」
須藤玲子《扇の舞》がオンライン公開がスタート

 

 

テキスタイルデザインスタジオNUNOのディレクターである須藤玲子の大型インスタレーション《扇の舞(Japanese Fanfare)》が、イギリスのコンプトン・バーニー・アート・ギャラリー(Compton Verney Art Gallery)にて開催中の展覧会「ファブリック:タッチ&アイデンティティ(Fabric: Touch and Identity)」のフィナーレを飾っています。

 

新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け現在美術館は休館となっていますが、このたび展覧会のオンライン公開がスタートしました。
www.comptonverney.org.uk/fabric-touch-identity

 



ファブリックが創り出す私たちのアイデンティティ

イギリスの田園地帯に位置するコンプトン・バーニーは18世紀に建てられた邸宅を改装した美術館で、美しい庭園とユニークな切り口の展覧会で知られています。開催中の「ファブリック:タッチ&アイデンティティ」は、私たちの第2の皮膚であるファブリックについて、アート、デザイン、ファッション、映画、ダンスのレンズを通して、その身体性と社会性に迫る意欲的で遊び心溢れる展覧会です。



左:Bob White《Between Cloth & Skin Series》2004  右:Annie Bascoul《’Vivre et Rever… En Dentelle‘》 2015 (c)Compton Verney


服に袖を通した際の布が直接肌に触れる感触は誰もが経験したことのある普遍的なものです。それは非常に感覚的なものですが、同時に服やテキスタイルはジェンダーやセクシャリティなど私たちの社会的なアイデンティティをかたちづくる重要な要素でもあります。展覧会ではこうしたファブリックと私たちとの関係性を日本から招聘された須藤玲子、野田涼美、イギリスを代表するファッションデザイナーのヴィヴィアン・ウェストウッドなど現代のクリエイターの作品、歴史的な絵画や衣服のコレクションを展観することで明らかにします。


 


Liz Rideal《Terme di Diocleziano》2017,  Fabric Touch and Identity(c)Compton Verney, photography Jamie Woodley

 


Vivienne Westwood《RED SUIT》1992,  Fabric Touch and Identity(c)Compton Verney, photography Jamie Woodley




青い扇に覆われた空間が呼び覚ます感覚の世界

この展覧会の最後の展示室に登場する須藤玲子による《扇の舞》は、2017年にワシントンDCにあるJ. F. ケネディ・センター(The John F. Kennedy Center for the Performing Arts)にて大統領生誕100周年を記念して開催された展示を発展させたものです。前回同様にフランスの建築家アドリアン・ガルデール(Adrien Gardere)が空間デザインを担当しました。展示室を覆い尽くす223に及ぶ布製の青い扇は、平安時代に日本で発明された扇を抽象化させたものです。扇は古くから「あおぐ」という本来の機能に留まらず、狂言では杯に、落語では蕎麦を啜る箸へと姿を変え、お茶席では自らの膝の前に置き結界を表すなど様々な役割を担ってきました。また何よりその「すえひろがり」の形状から祝い事に欠かせないかたちでもあります。そんな日本文化の多義性を象徴する扇を今回はすべてブルートーンで制作しています

 



須藤玲子《扇の舞》2020,  Fabric Touch and Identity(c)Compton Verney, photography Jamie Woodley

 

「青」は日本では古くは奈良時代より暮らしを彩り支えてきた色であり、作品を通じてこの青色への敬意を表しています。1890年に来日したラフカディオ・ハーンは後に日本の印象について次のように述べています。「青い屋根の下の家も小さく、青い暖簾を下げた店も小さく、青いキモノを来ている人々も小さい。」日本は紛れもなく青い国だったのです。


 

職人・工場とのコラボレーションによる作品制作

須藤はNUNOの活動を通じて、日本各地の優れたテキスタイルの生産者とのコラボレーションを重ね、伝統的な技術に最新のテクノロジーや現代的なデザインセンスを融合させる独自の布づくりに長年取り組んできました。『扇の舞』で使用されているテキスタイルもそうして開発をされたNUNOのアーカイブから選ばれたものです。その一部は今回の制作用に新たに染を施しましたが、徳島のBUAISOUによる本藍染から最新の熱転写まで、ここでも全国のつくり手と共に新旧の様々な手法に挑戦しています。
 


徳島の工房に依頼をした本藍染の工程 写真提供 BUAISOU

今回の展示で須藤は「扇」の空間の中に包まれ、テキスタイルの風合い、青色、扇が連なるうねり、リズムなどが体感されることを願いました。いわば「青い扇」の体験です。そうした意図から美術館のリアルな空間がクローズされていることは大変残念なことです。一方で今回のオンライン公開によって、カメラを用いたより近距離での鑑賞体験、世界中の方々にNUNOの作品を楽しんで頂けることなど新たな可能性も感じています。これからの展覧会の楽しみ方のひとつとして、本展のオンラインギャラリーをぜひお楽しみください。なお《扇の舞》は今年の秋、茨城県近代美術館での展示も計画されています。




 Photo:Tamura Kosuke

須藤 玲子  / Reiko Sudo  
茨城県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科デキスタイル研究室助手を経て、株式会社「布」の設立に参加。現在取締役デザインディレクター。英国UCA芸術大学より名誉修士号授与。2019年より東京造形大学名誉教授。2008年より良品計画のファブリック企画開発、鶴岡織物工業協同組合、株式会社アズのデザインアドバイスを手掛ける。2016年無印良品アドバイザリーボードに就任。毎日デザイン賞、ロスコー賞、JID部門賞等受賞。日本の伝統的な染織技術から先端技術までを駆使し、新しいテキスタイルづくりをおこなう。作品は国内外で高い評価を得ており、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館工芸館等に永久保存されている。2018年に国立新美術館にて個展「こいのぼりなう!」、2019年に香港のCHAT(Centre for Heritage. Arts and Textile)にてSudo Reiko: Making NUNO Textiles を開催。代表作にマンダリンオリエンタル東京、東京アメリカンクラブのテキスタイルデザインがある。
www.nuno.com 

 

 


アドリアン・ガルデール (C)YUZ MUSEUM

ルーブル美術館やケネディセンターといった国際的な文化施設で空間デザインをおこなうスタジオ、アドリアン・ガルデール創始者。フォスター+パートナー、SANAA, デヴィッド・チッパーフィールドや槇文彦といった建築家とも仕事の経験があり、視覚的、教育的、そして来場者が展覧会の内容に引き込まれる展示デザインで定評がある。東京の国立新美術館、香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)で展示された『こいのぼり』をはじめ、須藤の多くのインスタレーション作品でコラボレーションをしている。
www.studiogardere.com

 

 

【開催概要】
展覧会名:Fabric: Touch & Identity
会場:Compton Verney Art Gallery
協力:University for the Creative Arts,  Manchester Metropolitan University
オンライン公開URL:www.comptonverney.org.uk/fabric-touch-identity
*展覧会会期は2021年1月まで延長。現在は休館中でイギリスのロックダウン解除後に再開予定。
*展覧会の詳細・最新情報は以下をご参照ください。
www.comptonverney.org.uk

 

*関連情報:《扇の舞》日本国内での展示予定
2020年11月3日(火/祝)~12月20日(日)茨城県近代美術館 企画展『6つの個展 2020』
展覧会の詳細・最新情報は以下をご参照ください。 www.modernart.museum.ibk.ed.jp

 

 


コンプトン・バーニー庭から建物を臨む Compton Verney(C)John Kippin

コンプトン・バーニー・アート・ギャラリー / Compton Verney Art Gallery
シェイクスピアの生家があることで知られるイギリスのストラトフォード・アボン・エイボンから14kmの距離にある美術館。年に数回のペースでユニークな切り口の企画展を開催している。緑あふれる田園地帯に位置し、18世紀に建てられた邸宅をリノベーションした建物、並木道や小さな小川にかかる石橋など、映画のワンシーンを彷彿とさせる広大な庭園を擁する。館内にはレストランも併設されており、展示や庭園とともにイングリッシュティーとスコーンを楽しむことが出来る。
www.comptonverney.org.uk

 

 

(文:PR-M_PR制作部-1  /  更新日:2020.05.23)

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