nendoが手掛けた「陸上の安心感」を取り入れたマグロ漁船の内外装デザイン

 

nendo手掛けた
「陸上の安心感」を取り入れたマグロ漁船の
内外装デザイン

 

 

 

 

デザインオフィスnendoから、マグロ漁船の内外装デザインを手掛けたニュースレターが届きましたのでご紹介します。

 

宮城県・気仙沼の臼福本店が操業する遠洋マグロはえ縄漁船「第一昭福丸」の内外装のデザインを手掛けました。

総重量は486トンで乗組員は15名。メバチマグロやクロマグロなどを漁獲するために、約1カ月間の重労働を伴った洋上での生活をおくることから乗組員の心身ストレスは大きく、一般的に若手の離職率は5割を超えると言われています。そこで、このストレスを少しでも軽減しつつ、若手が憧れをもつような漁船のデザインを手掛けました。

 

 

船の美しいフォルムと直線的なパターンの外装デザイン

外装デザインは、船が本来もつ美しいフォルムを活かしたいと考え、直線的なパターンを施して船体の曲面を強調することに。

 

「和」を感じさせるグラフィックパターンへと再構成

「チガイヤマ・ホシ・イチ」と呼ばれる臼福の屋号を一度分解し、それとなく「和」を感じさせるグラフィックパターンへと再構成。この柄は、内外装の印象を統一させるために船内の床材など、様々な形で活用しています。


 

「直線」を利用したインテリアデザイン

インテリアもまた、「直線」を利用したデザインに。これは人が本来長期間洋上で生活をすることに慣れていないことから、「陸上」での生活を感じさせるビルや窓、扉、そしてスマートフォンやテレビの画面など、多くの直線に囲まれた環境を想起させることが安心感に繋がるのではないか、という仮定から生まれたものでした。
 

安全性の確保のために必要な曲面は維持しつつ、できるだけストライプ状の目地や直線的な開口部が用いられ、ライティングもまたライン状でありながらも落ち着きや安心感を与えるような間接光を使用。このとき、もうひとつポイントとなったのが「不均質さ」をどう生み出すかでした。

 

 

病院のインテリアなどに見られるように、機能性に特化した環境は均質な空間となりがちで、それが心理的なストレスを与えることがあります。


そこで、先ほどのパターンやストライプ、そして素材などを適度にランダムに配置することで場所ごとに特徴が生まれ、乗組員を飽きさせないことを考えました。
 

国内のマグロ船では初となるWi-Fi設備の完備や、従来より船内の天井を高くし、寝台など一人あたりの占有面積を拡大。
 

最後にデザインのアクセントとなったのが「重量感」でした。

これもまた、常に浮遊状態であることを少しでも忘れられるように、テーブルの天板を通常より厚めにしたり、スツールを切り株のような形状にしたりと、地面にどしりと根付いているような、量感のある家具デザインとしました。

このように「直線」「不均質」「重量感」という3つのキーワードに通じて、「陸上がもつ安心感」を取り入れたデザインを目指しました。

 

さらに、マグロを魚倉にスムーズに移動できるスロープの設置など、様々な機能上の改善も講じられており、少しでも乗組員の身体的そして心理的な負担を軽減することに配慮したデザインとなりました。
 
 

 


 
 
Collaborator : 乃村工藝社(interior), hnm
Photographer : Akihiro Yoshida, Takumi Ota

 

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(文:制作_インテリア情報サイト編集部_2  /  更新日:2020.04.30)

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