【インタビュー】日本のインテリアを世界へ!独自のライフスタイルと美意識の高いモノづくりの世界観

 

【コラム・インタビュー】
日本のインテリアを世界へ!
日本のインテリアは
独自のライフスタイルと
美意識の高いモノづくりの世界観が融合したデザインが強み

 

 

 

これから、中小企業に限らず、すべての日本企業が国内市場縮小に直面していきます。

一方、インド・中国・ASEANなど近隣のアジア諸国では約30億人におよぶ広大なマーケットが存在します。これから経済発展に伴い急増する富裕層と中間所得者層は、日本の商品を購入できる大きなターゲット市場となります。

 


| クールジャパン」の失敗

「クールジャパン」は日本の文化やポップカルチャーなど、外国人がクール(かっこいい)ととらえる日本の魅力を発信し、日本の経済成長につなげるブランド戦略です。アベノミクスの成長戦略のひとつで、政府は積極的な海外展開を目指しています。しかし、その推進役として設立された政府と民間による「官民ファンド」のプロジェクトで、損失が膨らみ、投資の失敗ともいえる事例が相次いでいます。

2016年10月にオープンしたマレーシアの首都、クアラルンプール最大の繁華街にある百貨店「ISETAN the Japan Store」はオープンからわずか1年半で事実上の撤退。また、一度撤退を表明した(2019年8月23日継続発表)上海高島屋の苦戦など「クールジャパン」の成功例はなかなか聞こえてきません。

 


マレーシア・クアラルンプールに2016年10月にオープンしたスペシャリティストア「ISETAN The Japan Store Kuala Lumpur」 イメージ画
 

それらの失敗の原因として「『売り』に専念する余り、現地の『買う』側の都合や状態をまったく無視したメイドインジャパンのラグジュアリー的な商品構成が「上から目線」を感じずにいられない。」との声が多いようです。

たしかにラグジュアリービジネスは収益性が高く魅力的です。ラグジュアリービジネスで成功例の多いアパレルの有名企業を束ねる*LVMHグループの業績は2018年12月期の売上高が約5兆8500億円。日本のアパレル市場全体が9兆7500億円を考えると、数社でその半分を超えているのはたいへんな功績です。(因みに海外事業部も入れたユニクロの売上は2兆円)

これまで日本発のラグジュアリーブランドで世界的な名が知れ成功した企業はわずかで、ましてや「プレミアムラグジュアリー市場」は皆無。「プレミアムラグジュアリー」ブランドが確立されていないなかでの、いきなりのメイドインジャパンのラグジュアリーな商品構成では無理があったのではないでしょうか。

*「モエ・ヘネシー」と「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」の合併によりスタートしたフランス・パリを本拠地とする巨大コングロマリット(複合企業)。5つの事業セクターから70の高級ブランドを保有。

 

 


| 外国人が欲しがる「日本ブランド」とは?

グローバルで成功している日本発のラグジュアリーブランドは、アパレルのコムデギャルソンイッセイ・ミヤケサカイなどでしょうか。これらのブランドの共通は、クリエティブな商品はもちろんのことですが、「テクノロジー」「ジャパニーズ・ミニマル」。

「テクノノロジー」は世界から注目されている繊維や生地が、職人のこだわりや匠の技術が感じられるテキスタイルとして高く評価されて人気を得ています。そして、一見すると何でもないシンプルな形ですが、実際に着てみると身体になじむ無駄のないファッションの「ジャパニーズ・ミニマル」。着物や和柄などを感じさせるものは前面にだしていません。

また、現在最高の売上と利益を計上して近年復活を果たした化粧品ブランドの「資生堂」は、ビジネス価値を資生堂独自の強みとして「技術」、「クリエーション」、「おもてなし」のフロー創造プロセスで、女性や仕事をキーワードに縦軸から、横軸からとコーポレートガバナンスをつくっています。

外国人に求められる日本ブランドは、単純なジャパニズムではない「日本らしさ」、つまり、ブランドの世界観に日本的な要素(技術やこだわり、品質の高さ)を取り入れて、そこに伝統といった日本らしいイメージを組みあわせた新価値創造で作られた商品が良いのではないでしょうか。

 

 


| 世界を目指す日本発のインテリアラグジュアリーブランド

TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)は、2017年3月23日、オランダ・アムステルダム市に自社店舗を開店しました。

TIME & STYLEはすでに、日本では東京の六本木、新宿、二子玉川、大阪梅田、そして中国の上海に店舗を構えるインテリアブランドです。

インテリアの先進国はやはりヨーロッパ。まずヨーロッパで認められなければ北米やアジアへの展開は難しいと考えたTIME & STYLEは、パリやミラノよりヨーロッパのハブとしてとても良い場所にあるオランダ・アムステルダム市に自社店舗を開店しました。ヨーロッパの中では決して大きな都市ではないですが、アムステルダムはどの都市にも数時間で異動できますので、多くのヨーロッパの人が気軽に観光に訪れる街です。

【関連記事】
・【コラム】 欧州出店から世界へ向かうインテリアブランド

 


タイム&スタイルアムステルダム店では2019年6月22日(土)- 8月18日(日)の期間、建築家 隈研吾氏の『KENGO KUMA EXHIBITION(隈研吾 エキシビジョン)「環境に溶け込む家具」』を開催

 

【関連記事】
・隈研吾エキシビジョン  タイム&スタイルアムステルダム店で開催


TIME & STYLEは、無駄な装飾性を削ぎ落とした日本独自の美意識である簡潔、調和、静寂と言った生活の美学を追求し、オリジナリティーの高いデザインと高品質な製品を創造していく日本発のインテリアラグジュアリーブランドです。



商品は、シンプルな佇まいの中に、シャープな緊張感が宿り、繊細な細部の仕上げからは日本の職人による高い技術の結晶がうかがえる家具、照明、日用品、テーブルウエア類。
 


北海道 旭川の自社工場及び日本各地の協力工場によって製造される製品は、熟練した職人の手仕事と最新の機械加工による効率化のバランスを図りながら、一点一点丁寧に大事にもの作りとデザインの両面に真摯に向き合っています。

 

 

 

|  アムステルダム出店からその後

TIME & STYLEを運営する株式会社プレステージジャパンの代表取締役である吉田龍太郎氏にアムステルダム出店のその後をお聞きしました。

海外展開するビジネスは、政治、経済、気候変動、災害など、予期しないリスクもあります。ですが、いくらリスクがあったとしても、海外市場にはチャレンジする価値があります。

そう考えて、2017年の春にアムステルダム店出店しました。

最初の年はディスプレイを変えるだけの毎日です。店舗はヨーロッパの建物です。どうすればこのヨーロッパの建物に日本発の家具がなじむのか。馴染むようでなかなか馴染まない。その繰り返しでようやく最近は落ち着いたレイアウトになりました。リアル店舗の空気感はとても大切です。とくにインテリアを売る店舗にとってそこは居心地の良い空間でなければいけません。

アムステルダムに出店して何かメリットは感じますか?との質問に、

毎年ヨーロッパの展示会に出展をしているのですが、来場者に日本だけでなくアムステルダムにもお店があってそこにはもっとたくさんの商品が展示されていると言うと、とても興味をもってくれます。今度来店するよって言ってくれた人は、たいてい寄ってくれる。ヨーロッパはEUで一つにまとまっていて、日本人が地方に出張に行くくらいの気持ちで気軽にやってきます。距離感はそれと同じです。

今年(2019年)2月に、アムステルダム、フランクフルト、ストックホルムのヨーロッパで開催される3つの展示会に出展しました。やはり、アムステルダムにお店があると船便でわざわざ運ぶのではなく陸便ですむので展示会出展も楽になりました。

 

 

| サテライト会場として参加したMONO JAPAN

アムステルダムで開催のMONO JAPAN ではTIME & STYLE アムステルダム店はサテライト会場として参加しました。


MONO JAPANでサテライト会場となったTIME & STYLE アムステルダム店
 

MONO JAPANは、毎年2月にアムステルダムのロイドホテル(Lloyd Hotel & Cultural Embassy)で開催される日本のクラフトやデザインプロダクトに特化した展示・即売会です。

本会場であるロイドホテルは、各出展者がインテリアデザインの異なる各客室を使い独自の展示方法で出展し、各種ワークショップなども行います。現代のヨーロッパ人のライフスタイルにフィットした、質の高いプロダクトやブランドをヨーロッパ向けにセレクトし、日本のモノづくりの世界観や日本ならではの伝統的なモノづくりの背景を伝える場です。期間中は、クリエイターや専門家から見た日本の『MONO』の魅力に関するトークイベント、アート作品の展示、日本の出展者による『MONO』づくりの技を体験できるワークショップなども開催されました。TIME & STYLEアムステルダム店のサテライト会場には4社が参加し、元警察署であるモニュメンタルな建物の中で 家具から食器、お茶、盆栽まで幅広くご覧いただきました。
 

MONO JAPAN
http://www.monojapan.nl/

Lloyd Hotel & Cultural Embassy
http://www.lloydhotel.com/

 

 

 

| 今年も“Japan Style”の一員として出展


フランクフルトで開催のAmbiente(アンビエンテ) 国際消費財専門見本市 会場の様子

Ambiente
https://ambiente.messefrankfurt.com/frankfurt/en.html
 

フランクフルトで開催のAmbiente 2019(アンビエンテ 国際消費財専門見本市)は、世界中から多くの方が訪れる消費財分野にとって最も重要な見本市として位置付けられる展示会です。TIME & STYLEは、今年も“Japan Style”の一員として出展しました。

日本には、古くから伝承されてきた独自の美意識に基づく伝統や工芸などの生活文化が現代生活に深く息づいています。伝統的な文化や技術を大切にしながら、一方ではテクノロジーやファッション、デザイン、ポップカルチャーといった産業を発展させ、多様性のあるライフスタイルが共存しているのが、現在の日本の姿です。“Japan Styleは、こうした日本独自のライフスタイルと美意識の高いモノづくりが融合した日常のデザインを、生活様式とともに世界へ発信していくプロジェクトです。

この2つの展示会は数年、回を重ねて出展しています。
 

 


 

|  反響が高かった展示会

ストックホルムのStockholm Furniture Fair 2019(ストックホルムファニチャーフェア)は、TIME & STYLEは初出展で、ブースを構えるのは日本の企業としても初出展でした。北欧最大級の家具のこの展示会への挑戦は、アムステルダム店をオープンして以降、日本の文化や伝統技術を世界に発信する最高の機会だと思いました。新作のキャビネットやチェア、オリジナルのテーブルウェアを展示し、世界中から訪れる方々に日本独自のモノづくりから生み出されるインテリアライフスタイルを提案しました。

どの展示会場もわれわれの展示ブースにはいつもより多くの方にご来場いただいたのですが、特にストックホルムのStockholm Furniture Fair (ストックホルムファニチャーフェア)での反響が高かったです。

Stockholm Furniture Fair
https://www.stockholmfurniturelightfair.se/
 









 

キャビネットを中心に展示をしたのですが、これはどこで作っているのか、こんなことをできる技術者がまだいるのか?などの質問に、全部日本製で日本の職人が作っているというと、なるほど日本にはいるだろうと納得していました。

展覧会後は毎日のように世界中からメールとファックス、または電話でお問い合わせをいだいき、想像した以上の反響の高さにわれわれがびっくりしています。おかげさまで欧米からもアジアからもいろいろ良いお話をいただきます。一般のお客様からの注文も増えましたし、コントラクトのプロジェクト案件も何件がすすんでいます。

まず、9月始めにシンガポールに代理店の新店舗がオープンしました。また、中国でも上海店の次の店舗を検討中です。ですが、われわれには次の出店計画を急ぐ気はなく、ひとつ一つを丁寧に検討しながら考えています。なぜなら、出店の場合、やはり場所や店舗の広さはそれなりのところが必要で、TIME & STYLEの世界観をしっかり理解してもらえる代理店を希望するからです。

 

 

 

|  ヒット商品がない

アムステルダム店を出店するまで構想から10年という時間がありました。その間われわれは、北海道 旭川に自社工場を建て、日本各地に協力工場を探しながら、熟練した職人の手仕事と最新の機械加工による効率化のバランスを図りながら、一点一点丁寧に大事にモノづくりとデザインの両面から真摯に向き合ってきました。

ですが、TIME & STYLEには爆発的に売れたヒット商品がありません。

なぜTIME & STYLEにはヒット商品がないんですか? 全体的に売れているのはいいのですが、こんなに細かいと伝票が増えてたいへんです。

これはある日ふと経理担当が漏らした言葉です。それだけアイテム数が多いと言うことです。確かにヒット商品がないんですよと笑いながら答える吉田さん。

あえて言うとすればTIME & STYLEの世界観がヒット商品です。

 

TIME & STYLEのテーブルウェアは、一見和食向きと思われがちですが、フレンチレストラン「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」様にご愛用いただいています。シンプルで繊細な白磁のプレートが、日本の四季折々の素材を取り入れた、こだわりの詰まった美しいお料理を引き立てます。レストランオリジナルの給仕用のプラトーは、北海道の山桜を使用し、旭川のTIME & STYLE FACTORYにて製作させていただきました。

 

家具も和食のレストランだけではなく、フレンチやイタリアンレストラン、カフェでも多く使っていただいております。

そこを訪れたお客様がその世界観に惹かれ自宅でも使用したいと、東京ミッドタウンや二子玉川の店舗にご来店くださる。そういう流れが出来上がっています。一点もののヒット商品ではなく、世界観全体で売り上げをつくりあげています。

これを世界に広げていきます。それがわれわれのクール・ジャパンだと自負しています。
 


アキュラホーム AQレジデンス馬込展示場に設置されたTIME & STYLEの家具


アキュラホーム AQレジデンス馬込展示場

 

 

 

| 職人技術を伝承して雇用を守る


 

今年から、旭川のTIME & STYLE FACTORYでは製材所をスタートさせました。丸太の状態から加工までの工程を丁寧に行いながら長く使える良い家具を製作するためです。丸太を挽く際に、曲がりや節の具合をよく見極めて、どの面を出せば美しい表情が見せるだろうかと考えながら製材します。また、木屑は固形燃料にして再生エネルギーとして利用できますので、山を守ることで環境問題などグローバルに挑戦する企業として*SDGsにも少しずつ取り組んでいきます。

また、全国の産地を廻り、日本各地で製造されている製品にTIME & STYLEの生活の美学を追求したデザインで付加価値を加え、地域の伝統工芸技術との協働で製作します。一つひとつ丁寧につくられたものはそれなりの価値がありそれに合う適正価格が必要です。その商品が高いか安いかを判断するのは消費者ですが、付加価値の高い商品開発やイノベーションによる新価値創造で作られた商品を世界の消費者は認めてくれます。

そこで初めて熟練の技術者たちの雇用が守られるのです。

*SDGs:持続可能な開発目標。200年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。

 

 

 

 

| 巨大な市場を前にしてクールにならない戦略

AIについての10年先、20年先の戦略の話はよく聞きますが、それと同じく「クールジャパン」も一時で終るのではなく、これからも永遠と続けなければいけない戦略です。

それには、プレステージブランドやボーダレスマーケティングといった創造プロセスをいろいろな方向から仕掛けていく戦略が必要です。

一方で安値販売に邁進する日本メーカーがあります。確かに「安くて良いモノを出す企業」があることは良いことです。ですが、いくら高品質でも低価格ばかりで売り続けていては、日本人はいつまでも低賃金で働き続けなければいけません。「低価格路線は勝利の法則」から脱却しなければ、日本のものづくりに未来はありません。これは巨大な市場を前にしてまったくクールにならない戦略です。

ただ安くして売ればいい、高くして売ればいいだけの問題ではないのです。

一時期、家電製品やスマートホン、パソコンなどの半導体製品を手放して日本の製造業は「終った」と揶揄されていましたが、昨今の日韓問題で改めて、日本の技術力の高さの再評価と戦略が話題です。それは、「*コモディティが起こる家電やパソコンをさっさと捨て、高い付加価値を持つ基幹部品や製品を世界中に供給する転換をしていた。」「日本企業の材料や部品が世界的に高い競争力を持つのは、日本には“他の国では作れないものを作ろう”という高い志を持った中小企業がいまだ数多く存在するから」と言われています。それは消費財のものづくり企業でも同じことです。

インテリアは究極のホスピタリティ産業です。効率化やスピートが重要視される世の中でも絶対に必要なのが精神を豊かすること。人はスピードを出しすぎると心の豊かさが見えなくなり、愛や感謝、喜びや楽しみを取り戻したいと思うとき、音楽やアートで心のバランスを摂ろうとします。それと同じように日本のインテリア文化には心や精神を豊かにするものづくりが求められているのではないでしょうか。
 

*コモディティ化:市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。

 

 

【関連記事】
#タイム&スタイル

 

 


http://www.timeandstyle.com/

 

 

 

 

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2019.09.30)

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