【インタビュー】 欧州出店から世界へ向かうインテリアブランド~

 

 

【インタビュー】
欧州出店から世界へ向かうインテリアブランド
未来にむけて動き出した企業

 

 

海外から見た日本といえば寿司、侍、忍者、スーパーマリオ、アニメなど多様なイメージで、最新ハイテク技術と伝統文化が融合した不思議な国のようです。
 

2016年訪日外国人客数が2000万人を突破し、東京五輪が行われる2020年には「4000万人」の誘致を目指している日本です。その中で訪日外国人の7割を占めるのがアジアの近隣諸国。歴史問題を背景に政治的な関係は決して良好とは言えませんが、若者たちはアニメなどの文化的な影響力で日本に対して「並々ならぬ関心」を抱いています。
 

一方日本国内は、円安の影響など外貨を稼ぎなんとか景気をささえていますが、経済が本格的に回復するには国民がもっとお金を使って内需拡大が必要です。ですが、20前に比べて若者人口は年々減少し生産年齢の人口が減っている上、人口減少も進み、やがて日本の内需志向にも限界がきます。人口ボーナスで景気を支えられたのは昔の話。内需を中心に発展してきた企業には切実な問題です。それを考えるといやおうなしに諸外国、特に近隣諸国とは手を取りあって進んでいかなくては日本の未来は見えてきません。
 

そんなものづくりの企業では「日本製の商品を海外展開したい」と考えているところも多いです。クールジャパン戦略の影響でMade in Japanは世界中でブーム。しかし、このままではMade in Japanブームは一時的なもので終わる可能性が高いのでは?とも言われています。

それは、日本企業がこのすばらしい「価値」を「ブランド化」してしていないからです。そのすばらしい価値をいち早くブランド化し、未来にむけて動き出した企業があります。

 

 


| 海外出店

毎年ミラノ、パリやフランクフルトでの海外見本市に出展をしていて、これは絶対に必要だと考えていました。10年くらい前からいやもっと前からヨーロッパ出店は考えていました。とおっしゃるのは株式会社プレステージジャパンの代表取締役の吉田さんです。TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)ブランドで知られる株式会社プレステージジャパンは、日本の消費財の中心であるインテリア産業を担う企業です。

 

インテリアは国の品位を守る生活文化であり、日本は独自のすぐれたものをたくさん持っています。それを守り、世界に伝えるためには日本以外のどこかにリアル店舗は必要でした。インターネットで何でも買える時代ですが、この空気感はインターネットでは伝わらない。

 

 


TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)は、2017年3月23日、オランダ・アムステルダム市に自社店舗を開店しました。

新店舗を構えた場所は、近くにナチスからの迫害で隠れ家として住んでいた場所が博物館となった「アンネ・フランクの家」や、王宮や国立美術館も顕在する観光客が多く訪れる旧市街地。好立地なところです。建物は1888年に建造され、一昨年までの約130年の長きにわたりアムステルダム市の警察署として市民に親しまれてきたオランダ国の歴史保護建造物に指定されているもの。その一棟を借り受けて、店舗、ショールームとして運営していきます。

 

 


| なぜオランダ・アムステルダムに出店を?

インテリアの先進国はやはりヨーロッパです。まずヨーロッパで認められなければ北米やアジアへの展開は難しいと思いました。アムステルダムはヨーロッパでは決して大きな都市ではないですが、パリやミラノよりヨーロッパのハブとしてとても良い場所にあります。どの都市にも数時間で異動できますので、多くのヨーロッパの人が気軽に観光に訪れる街です。

オランダ人気質はとてもおだやかです。アムステルダムは小さな都市で新しいものがあるとすぐに伝わりそれを聞きつけて人々が集まる。そしてオランダは自他共に認めるデザイン大国です。ヨーロッパのオピニオンリーダーが認めればそれが世界中に発信されます。

ヨーロッパで認められれば、これからのマーケットの中心となる北米やアジアへと広がります。特にアジアは日本企業にとって魅力かつ重要なマーケットです。リピート訪日で日本の魅力にはまるアジアの若者たちがやがて結婚し、家庭をもって家造りを始める。これからのインテリアマーケットに重要な地域です。

日本のインテリア消費財はもともとアジアの発祥のものが多く、彼らにとってはそれほど違和感なく使えますし、日本のものづくりをリスペクトしている文化人も多いです。

 


| インテリアという文化を海外に、そして未来へ発信する使命がある

インテリアと言えば世界では北欧やイタリアなどの認知度が高いです。品質が良いのはもちろんですが、インテリアのマーケティングとブランド戦略を早くからやっていました。インテリアの有名メーカーは、元は小さな家内工業だったところがほとんどです。それをうまくブランディングしながら成長させてきました。


現在日本のインテリア文化も食文化と同じように世界各国で認知されてきています。特に欧米ではミニマムズは日本の文化として人気があります。禅とかわびさびの世界です。そのようなシンプルな空間はこれからもますます日本のインテリア文化として認知されることでしょう。

お辞儀や敬礼・本音と建前、謙遜といった独特の文化をもった日本。言語外の空気を読み、たおやかに、ゆるやかに、ゆったりと対処するそんな趣のある文化。静寂の中に喜びを見いだし、繊細な感性を重んじる日本文化。これを磨き上げて、高い精神性を身につけたい人が日本の文化に興味をもっています。

 

 



| 商品一つひとつにストーリーがある。

TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)の商品は日本をテーマにしたものが多いですが、漆や工芸品などで日本を象徴するようなTHE NIPPONのイメージではなく、日本人特有の美意識をコンセプトに、新しいインテリアスタイルの商品を開発しています。

日本発の消費財は多くの工業技術や伝統工芸技術で守られています。特にインテリア用品は地域で奮闘している多くの職人や作家によって造られたものが大半です。TIME & STYLEの製品はすべて日本製です。椅子やキャビネット等の木工製品は旭川の自社工場で熟練の技術者たちが一つひとつ丁寧に生産したものを、他のプロダクトは地域の伝統工芸技術との協働で製作されたものです。

 

 


たとえばキャビネットの脚。富山県高岡市の銅器で造られています。高岡市は伝統工芸製品の製造がいまでも盛んな地域で高岡銅器は千数百度の高温で溶かした金属を型に流し込む鋳造法を全国1位の生産額を誇っています。高岡には鋳造・磨き・彫金などの各工程に、高度な技を持った熟練の職人がおり、近年は現代のライフスタイルに合った新商品の開発も盛んで、その技術が現代のものづくりにも生かされています。

 

bisqueという名のペンダント照明は東京都江戸川区の「へら絞り」の技術で金属を成型する工場で製作しています。「へら絞り」とは金属の平板を回転させながら、金型を土台にしてへらと呼ばれる棒で職人が力を入れて金属板を金型に押し当てながら同心円の立体物に成型してゆく、手づくりの金属加工技術です。

宇宙開発のロケットの先端部やパラボラアンテナなどの様々な分野でへら絞りの技術が使われています。一つひとつ手加工のため大量生産には向きませんが、複雑な形状も職人の手によって成形することができる技術です。

 

 

 

全体の形状は伝統的な雪洞照明の緩やかで円弧の形から、現代的な空間の中で決して日本的になりすぎることのないように、和紙を通した電球のあかりが空間の中に日本的且つ現代的で新鮮な空気を生み出すことを目指した美濃和紙を使ったランプ。

杉材のフレームは少しだけ肩を張るような曲木のラインを作り、従来の癖のない形に現代的なエッセンスを加えました。その杉材の細さが照明全体の繊細な雰囲気を生み出しています。指物師の高度な技術力と新しいことに挑戦する気持ち、そして美濃和紙職人の誠実な仕事から生まれた和紙の美しさが生み出すアンサンブルから生まれた製品です。

 

TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)にはたくさんのテーブルウエア製品もあります。漆器や陶器・磁器などそれぞれのテーブルウエア製品は、全国の産地や窯元、工房を巡り、職人とともに産地特有の技術や伝統工芸を用いて作り上げているオリジナルプロダクトです。


アムステルダム店で一番話題になるのがグラス。余計な装飾の一切ない、シンプルで美しいグラス。技術を大切に受け継いた熟練の職人が吹き上げるガラスは厚さ1mmを切り、一つ一つ丹誠こめて作り出される極薄のグラスです。ガラスとは思えないほど軽くてソフトな手触りの薄さを均一に精製されたグラスは力が分散し、簡単には割れない強度を持っていますが、丁寧に扱わないとやはり厚みのあるグラスよりは割れやすい。

日本人はこんなグラスを日常で使っているのか?食器洗乾燥機に入れられないじゃないか・・・

と、オランダ店を訪れたお客様によく聞かれるそうです。日本人は丁寧に一脚づつ洗うというと、ためいきまじりに感嘆し、ばかにするわけでもなく、感心してほめるわけでもない何ともいえない表情です。これが日本の文化だと一応は理解しているようです。

 

TIME & STYLEの商品にはひとつひとつにストーリーがあります。それを現地のお客様に伝えなければいけない。日本の器の良さや使い方を知ってもらうために、一流シェフによるTIME & STYLEの器を使って料理デモンストレーションや小さなコンサートなどを開催しています。

 

人の趣味趣向はいろいろで、日本でもヨーロッパ文化のインテリアが好きな人がいるように、世界には日本のインテリアが好きな方が大勢います。ですが、われわれはそれをまだ伝え切れていない。しっかり伝えることで初めてインテリアの先進国と肩を並べられる。われわれには世界に発信していかなくてはいけない。

今回のアムステルダム出店を足かがりに日本のインテリア文化を世界に広めていき、認めさせるために発信し続けるのが使命と考えてTIME & STYLEです。

 

| インテリアは究極のホスピタリティ

第4次産業革命がすすみAIや機械によって労働が大きく変わろうとしています。一方で人間にしかできない質の高いホスピタリティがこれからは一層必要となります。文化・芸術、宿泊・飲食におけるサービスやホスピタリティのなかに、感度の高い消費財やインテリア文化があります。

日本企業で世界的に名の知れた消費財メーカーであるユニクロや無印良品が成功した背景には、価格設定などのロジスティックスやデジタル技術の「ビジネスモデル」がありますが、その商品の品質の良さと世界観が持つ本質的な強みで勝負している日本らしいブランドです。製造は海外の工場が中心ですが、日本人特有の粘り強く問題を突き詰めて少しずつ改善しながらいろいろなものを積み上げていく、アナログ思考的なものづくりの強みとそれをブランディングしているのが商品のひとつひとつに感じられます。

世界をみてTOP100に入る企業の数はアメリカやイギリス、中国には適いませんが、日本は強小企業が多いのが特徴です。知ってのとおりその強小企業の工業製品における日本の技術力と品質は驚くべき水準です。消費財生産も伝統工芸技術を受け継ぎながら高いレベルを維持しています。これだけの技術者を温存している国は世界をみてもそう多くはないのです。高度な技術者がいることが日本の宝なのです。


日本の工業技術や伝統工芸技術の良さをもっと広めなくてはいけない。そう考えた企業や地域では、昨今、地域の活性化を兼ねて、工場見学や体験イベントを多く開催しています。日本人がその宝の良さを認識しなければいけない。それを知るのはとても大切なことです。ですが、クール戦略は国家のブランドイメージ、若い才能による文化の活況、サービス業の発展、多様な民族の共存で成功する戦略です。文化を生み出す担い手やクリエイティブ産業、それを広めるメディアなどとが、世界の将来を席捲するようなマーケティングを発信しなければ成功はしません。

 

Made in Japanブームを一時的なもので終わらせないためにも、多くの企業が日本の強みを生かした高い技術力の商品開発や研究と同時に、マーケティングと世界に挑戦するブランド戦略を構築しながら発信していくことが望まれます。

 

 

 

タイム アンド スタイル オランダ・アムステルダム市に新店舗グランドオープン - → ☆ ☆

 


https://www.timeandstyle.com/

 

(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2017.10.01)

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