もう一歩深く知るデザインのはなし~曼荼羅

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 デザインの周辺にある「通り過ぎてしまいがちな事柄」を調べ考えてみることで、読者の方々の知識欲を引き出すことを目指す、「もう一歩深く知るデザインの話」シリーズ。

前回は、身の回りの様々な所にある「曼荼羅」について、定義的なことを調べてみました。
第2回となる今回は、日本の曼荼羅の代名詞ともいえる「密教においての曼荼羅」について見ていきます。


 

教の教えと、その中での曼荼羅の役割とは

 

Kukai.jpeg密教は4世紀ごろのインドに発生した仏教の宗派で、9世紀初頭に空海によって日本に伝わりました。

 

 

(空海 像)

 

密教の教えにおいて、最も上位の仏は「大日如来」です。

「大日如来」は宇宙の真理そのものであるとされ、
この世の全ての存在、現象は大日如来が姿を変えて現れたものです。

また、全ての人は心に「仏の種」を持っており、修行によって
生きたまま仏になる(=悟る)ことができます。

  

空海は、密教の教えはとても深く難しいので、「絵」によって分かりやすく表現するべきだと考えました。
そのシンボルこそが曼荼羅です。

つまり密教における曼荼羅とは、わが身が修行によって一体となるべき宇宙(=大日如来)のイメージを図で表したもので、瞑想をし易くするためにデザインされた「マニュアル」といえます。

 

日本での曼荼羅の主流は2つ

曼荼羅は各国に伝わる中で様々に進化していきました。日本での曼荼羅の主流は「胎蔵曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」の2つです。構造について、順番に簡単に紹介しましょう。

 

「胎蔵曼荼羅」とは

 

密教の経典のひとつ「大日経」をもとに、密教で考える宇宙の姿をそのまま図に描いたのが胎蔵曼荼羅です。


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中心は「絶対的なほとけ」大日如来。

その周りを取り囲むれんげの花のような形の部分は「中台八葉院」と呼ばれています。
悟りを得るための大日如来の智慧を体現した「如来」と「菩薩」が花びらの部分に座り、現実世界へ働きかけています。

ちなみにれんげの花は女性の象徴であると考えられ、れんげ→女性器→いのちを育む子宮、ということで、母親の胎内で育まれていく胎児のように、ひとの心にある「仏の種」が大日如来の慈悲によって目覚め、花開き、悟りという実を結ぶまでの過程がここにはあらわされているのです。

 
さらにその周りにも、大日如来が姿を変えて現れたとても多種多様な仏たちが配置されています。
この仏たちを通して、
大日如来の智慧が中央から放射状に、全世界へ拡がっていくさまが描かれています。 

ここまでは「胎蔵曼荼羅」について、お伝えしました。
次は、もうひとつの主流である「金剛界曼荼羅」の構造について、
さらに両者のデザインを通してその性格的な違いについて見ていきましょう。

 

 

 

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(文:maki  /  更新日:2012.05.21)

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