ミラノサローネ2011 出展企業特集3

 

“存在を感じる”コミュニケーションツールとしての「家具」
〜Illirico Bank(イリリコ・バンク)〜


ミラノサローネのフィエラ会場で、毎年注目を集めるのが、若手デザイナーが出展する「サテリテ」部門。
出展の対象者は、「35歳以下でデザイン・建築などに携わる者」「企業などがバックアップする商業展示・製品製造者は不可」、割安な出展料金など、新人デザイナーに門扉を開いているのが特徴。これまでに、サテリテへの出展をきっかけに、ブランドやメーカーからのオファーを受けるなど、メジャーになったデザイナーも数多く、プロダクトデザイナーの登竜門とも言える部門です。

今年のサテリテ部門に出展した「Illirico Bank(イリリコ・バンク)」は、ミラノで活動する日本人デザイナー6人によるデザインチーム。今回は、そのうちの4人が作品を制作展示しました。

サテリテのコンクールに選出された「IKEBANA」を制作した飼沼幸子氏。今年のチームのテーマ「より良いコミュニケーションをとれる家具」から飼沼氏が考案したのは、鈴が鳴るコートかけでした。飼沼氏は、まず男女ふたりの生活空間を想定。相手を思いやり、生活音が少しでも心地よく感じられるように、コートを掛ける際に鈴が鳴る仕掛けが。また、その音が聞こえることで、相手の気配を感じるという、間接的なコミュニケーションを意識しています。部屋に花を飾る時のような気持ちで、相手を思うツールになれば、と飼沼氏。通常、家に入り必然的に用のなくなったコートを、こぢんまりと整理するためのコートかけが、「IKEBANA」は玄関のメインに。身につけていたものを自由に飾り、玄関という空間を遊ぶ「見せるための家具」作品でした。

「ぬけがら」と題したチェアを発表していた、湯屋朋子氏。コミュニケーションは、お互いが顔を合わせるだけではないという考えから、人の「痕跡」が残ることでコミュニケーションを間接的にとるというシーンを模索。座った人の跡が残るチェアを制作しました。ピンプレッションに残る形状がおもしろいと思って、と湯屋氏。ピンプレッションをそのままチェアに転換させた同作品は、低反発クッションを利用し、ステンレスピンを並べたもの。実用性を高めるためにも、他の素材でも試したいとのことでした。

 

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(文:KEIKO YANO (矢野 恵子)  /  更新日:2011.05.20)

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